ピュアダーク
 コールの左右で両腕を押さえ込んでいた男子生徒は、目の前の攻撃で一瞬の隙をつかれ、力が弱まったところ、コールの腕がすり抜ける。

 そして素早いスピードで首根っこを押さえられてお互いの頭をぶつけられた。

 胴体を捕まえていたものも腕を引き剥がされ、簡単に投げ飛ばされた。

「この野郎!」

 残りの全ての生徒達が一斉に飛び掛ってくるが、コールは鼻でフンと笑うと、デブの体ながら機敏な動きで、あっという間に片付けていった。

 頭を足で踏み潰し、顔から血を流した男子生徒が悲鳴をあげる。

「おっと、これ以上踏んだら、死んじまうな。本当はそこまでやりたいんだけど、今日は我慢するか。お前らラッキーだぜ。俺に絡んでこの程度ですむんだからな」

 ブラッドリーはナイフを手に持ち震えている。

「もうよせ、俺に逆らえば、本当に命なくなるぜ。俺はお前の思っているようなデブのポールじゃないんだよ」

 本来のコールの邪悪さが、ポールの顔にも乗り移っていた。

 その気迫に負け、ブラッドリーの持っていたナイフが手から零れ落ちると、コールは背を向けて教室から出ていった。

 殴り合いはできても殺せないのが不満で、不完全燃焼になり機嫌は悪かった。

 ──早く元の体で、暴れたいぜ。そして殺(や)る!

 本来の自分のしたいことができないで、不満げにいたとき、廊下の先で歩いているヴィンセントが目に入った。
< 253 / 405 >

この作品をシェア

pagetop