ピュアダーク
 授業が終わると、次はランチタイムだった。

 ヴィンセントは逃げるように教室を誰よりも早く出て行く。

 ベアトリスは納得がいかず、真相を聞きだしたいとすぐに追いかけた。

「あーら、ジェニファーに内緒でヴィンセントとランチデートでもしようと思ってるの? この身の程知らずが」

 アンバーがベアトリスの腕を後ろから掴み、行く手を阻んだ。

 がくっと体が前につんのめり、妨げられた苛立ちの反動で体の中の何かに引火した。

 勢いよく振り返り、ベアトリスの唇がぶるぶる震え、怒りが露わになって行く。

 アンバーの顔を睨み、手を振り払うと同時に、突然パッとフラッシュが光った。

 その眩しさにアンバーは目をしょぼしょぼさせた。

 ベアトリスも何が起こったかわからなかったが、今はそれどころではないと、ヴィ ンセントを追いかける。

 廊下は人でごった返しになっている中、人と人の間にヴィンセントの姿が見え隠れしていた。
 
それをめがけて走ろうとするが、何度も道をふさがれた。

 右、左と方向を変え、やっと人ごみを抜けた廊下の突き当たり、ヴィンセントが立ち止まっているのがみえた。

 だがもう一人向かいに誰かがいた。

 黒いスーツを着こなし、背の高い男性が鬼の形相になってヴィンセントを睨みつけている。

 ヴィンセントは目を伏せ肩を落としていた。

「ヴィンセント!」

 ベアトリスが呼ぶと、黒いスーツをきた男性が、驚きの眼差しを向けた。

 ヴィンセントは咄嗟にベアトリスに背を向け、胸を押さえ込んだ。

 息が段々と荒くなっていた。

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