ピュアダーク
36 すれ違い
教室に入り、戻っていないヴィンセントの席を横目に、ベアトリスは自分の席についた。
先ほどの出来事が憂鬱の種となり、それに気をとられてぼーっとしていた。
ふと視線をずらせば今度はジェニファーが鬱陶しいと突き刺す挑戦的な態度を投げかけ、気がさらに重くなり深いため息が一つ洩れた。
コールは席に座りジェニファーに仕掛けた影に何かを期待しながらその様子を見ていたが、ジェニファーは睨むだけで行動を起こさない。
じれったいと苛立ち、コールの足がガタガタと落ち着きをなくしていた。
──もどかしい。さっさと殺ればいいのに。
コールは突然立ち上がり、ベアトリスの席に近寄ると、彼女の教科書を掴んでそれをジェニファーのいる方向に投げた。
「何をするの!」
ベアトリスはコールに驚きと腹立ちの入り混じった嫌悪感を露にしたが、体が大きい相手には怖くてそれ以上刃向かうこともできず、仕方なく黙って拾いにいった。
成り行きを楽しもうとニヤッと含み笑いを顔に浮かべ、コールは腕を組んでの高見の見物をしている。
だがベアトリスがジェニファーに接近したとき、ジェニファーが胸を押さえ込み前かがみになったのを見て、コールは眉間に思いっきり皺を寄せた。
ベアトリスは本を拾い、何もなかったように席に戻る。
コールが再びジェニファーに視線を移せば、息は荒いがジェニファーは平常に戻っていた。
──一体どういうことだ。ヴィンセントも同じような態度を取っていた。
コールはまじまじとベアトリスを訝しげに睨み、彼女に近づいた。
ベアトリスは怯えきり、顔を思いっきり逸らして無視を決め込んだ。
コールがベアトリスの机に手を置き威圧感を与えると、アンバーが突然間に入ってきた。
「ちょっとやめなさいよ」
「なんだよ、お前」
コールは呆気に取られてたが、それ以上にベアトリスの方が驚き、口を大きく開けていた。
アンバーが自分を庇うなんてありえない。
はっとしたとき、慌てて口を閉じた。
コールはクラスの注目を浴び、遣り難くなったと、まずは引いて自分の席に戻っていった。
ベアトリスは、アンバーに『ありがとう』と恐る恐るお礼を言ったが、アンバーはやはり普段と変わらない。
「あなたを助けようと思ってやったんじゃない。アイツが許せないだけよ。誤解しないで」
「えっ?」
ベアトリスは益々訳がわからず、キョトンと意識が一瞬飛んでしまう。
アンバーはコールに挑むような目を向け、自分の席に戻ろうとすると、側を通る彼女の腕をコールは掴んだ。
アンバーはドキッとして振り返り、顔を赤くすると同時に、負けてたまるかと益々睨みを利かす。
「お前、俺に刃向かえばどうなるかわかってんじゃなかったのか」
「あんたの脅しなんて怖くないわよ。あんたこそ私を舐めないでよね」
手を振り払い果敢な態度で席に着いた。
コールは退屈な高校生活の中で、少しは面白いとばかり、アンバーを鼻で一笑いした。
こういう女はコールは嫌いではなかった。
アンバーは席につくともう一度、ちらりとコールを振り返る。
コールはその時、ベアトリスの方を見ていた。
アンバーは苛立ってふんと前を向いた。
先ほどの出来事が憂鬱の種となり、それに気をとられてぼーっとしていた。
ふと視線をずらせば今度はジェニファーが鬱陶しいと突き刺す挑戦的な態度を投げかけ、気がさらに重くなり深いため息が一つ洩れた。
コールは席に座りジェニファーに仕掛けた影に何かを期待しながらその様子を見ていたが、ジェニファーは睨むだけで行動を起こさない。
じれったいと苛立ち、コールの足がガタガタと落ち着きをなくしていた。
──もどかしい。さっさと殺ればいいのに。
コールは突然立ち上がり、ベアトリスの席に近寄ると、彼女の教科書を掴んでそれをジェニファーのいる方向に投げた。
「何をするの!」
ベアトリスはコールに驚きと腹立ちの入り混じった嫌悪感を露にしたが、体が大きい相手には怖くてそれ以上刃向かうこともできず、仕方なく黙って拾いにいった。
成り行きを楽しもうとニヤッと含み笑いを顔に浮かべ、コールは腕を組んでの高見の見物をしている。
だがベアトリスがジェニファーに接近したとき、ジェニファーが胸を押さえ込み前かがみになったのを見て、コールは眉間に思いっきり皺を寄せた。
ベアトリスは本を拾い、何もなかったように席に戻る。
コールが再びジェニファーに視線を移せば、息は荒いがジェニファーは平常に戻っていた。
──一体どういうことだ。ヴィンセントも同じような態度を取っていた。
コールはまじまじとベアトリスを訝しげに睨み、彼女に近づいた。
ベアトリスは怯えきり、顔を思いっきり逸らして無視を決め込んだ。
コールがベアトリスの机に手を置き威圧感を与えると、アンバーが突然間に入ってきた。
「ちょっとやめなさいよ」
「なんだよ、お前」
コールは呆気に取られてたが、それ以上にベアトリスの方が驚き、口を大きく開けていた。
アンバーが自分を庇うなんてありえない。
はっとしたとき、慌てて口を閉じた。
コールはクラスの注目を浴び、遣り難くなったと、まずは引いて自分の席に戻っていった。
ベアトリスは、アンバーに『ありがとう』と恐る恐るお礼を言ったが、アンバーはやはり普段と変わらない。
「あなたを助けようと思ってやったんじゃない。アイツが許せないだけよ。誤解しないで」
「えっ?」
ベアトリスは益々訳がわからず、キョトンと意識が一瞬飛んでしまう。
アンバーはコールに挑むような目を向け、自分の席に戻ろうとすると、側を通る彼女の腕をコールは掴んだ。
アンバーはドキッとして振り返り、顔を赤くすると同時に、負けてたまるかと益々睨みを利かす。
「お前、俺に刃向かえばどうなるかわかってんじゃなかったのか」
「あんたの脅しなんて怖くないわよ。あんたこそ私を舐めないでよね」
手を振り払い果敢な態度で席に着いた。
コールは退屈な高校生活の中で、少しは面白いとばかり、アンバーを鼻で一笑いした。
こういう女はコールは嫌いではなかった。
アンバーは席につくともう一度、ちらりとコールを振り返る。
コールはその時、ベアトリスの方を見ていた。
アンバーは苛立ってふんと前を向いた。