ピュアダーク
「という訳で、ベアトリスは今日は用事があるそうです」

 レベッカが棒読みで言った。

 ケイトがもっときっちりしろと肘でこつく。

「あの、とにかく久しぶりに他の友達と過ごしたいみたいです」

 補足するように慌ててグレイスが付け足した。

「そっか、まあ急な用事もあるだろう。仕方ないな。わざわざありがとう。ところで、ベアトリスは学校では何も問題なさそうかい?」

「えっ、そ、そうですね」

 グレイスは正直に何もいえない。

「どんな小さなことでもいい、もし変わったことがあったら教えて欲しい。それからヴィンセントのことを知ってると思うけど、奴は彼女に近づけないでいるかい?」

「あっ、ライトソルーションの効き目が続く限り、そ、そうでしょうね」

 グレイスはもうこれ以上発言するのが耐えられないと、泣きそうな顔でレベッカとケイトに助けを求めた。

「君はまだ僕のこと怖がってるみたいだね。あの時は意地悪してごめん。そんなに怯えなくてもいいんだよ。それに君達はベアトリスの友達なんだろ。そしたら僕にも友達だ」

 パトリックが上手く誤解してくれたことに、グレイスの顔に安堵の色が現れた。

 愛想笑い程度に微笑んでいたが、良心の呵責だけは拭えなかった。

「僕達の結婚後も、君たちに時々遊びに来て貰えたらベアトリスも喜ぶと思う」

「もう結婚するって決まったみたいな言い方ですね」

 ケイトが一番落ち着いて受け答えした。

「うん、近いうちに式を挙げると思う。アメリアも許可してくれたし」

「えっ!」

 三人は一緒に声を合わせて驚いた。

「あっ、つい嬉しくて僕も喋りたくなっちゃったけど、これはまだベアトリスには内緒にしてて。彼女はまだアメリアが賛成してること知らないんだ。それじゃ、長話もなんだから、 僕はこれで失礼する。色々とありがとう」

 パトリックは去っていくと、三人は顔を見合わせた。

「ちょっと、なんか大変なことになってきた。サラにはこの話できないし、それにヴィンセントと何か企んでそうだし、ベアトリスは一体どうなっちゃうんだろう」

 レベッカが言った。

「どうなっちゃうっていっても、なるようになるしかないんじゃないの」

 ケイトが自分の知ったことではないと冷たく突き放す。

「それじゃ私達、誰の味方をすればいいの?」

 グレイスが疑問を投げかけると、皆無言になってしまった。


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