ピュアダーク
「ベアトリス、なんか誤解してるみたいだけど、ヴィンセントは」

 サラが言いかけたが、ヴィンセントが首を横に振り、それ以上口を出すなと示唆をする。

 そして下を向いて、唇をかみ締めた。

 ベアトリスは涙が零れ落ちそうになるのを阻止することができず、隠すために背を向けた。

「ベアトリス…… 不器用でごめん」

 そういい残し、ヴィンセントはいたたまれなくなって去っていった。

「ベアトリス、あんたってほんと傷つきやすいのね。まずは自分を変えなければ、あなたは周りのこと何一つ判るわけないわ。ただ皆に守られて、一人で何もできない。一人で勝手にうじうじしてるから、いつまでも自立できずに、悪い方へ考えてしまうのよ」

 サラに痛いところを突かれてベアトリスの涙が止まらなくなった。

 ポロポロと次から次へとこぼれていく。

 そしてサラもヴィンセントの後を追った。

 後ろを振り向き、ヴィンセントを追いかけて一言「気にしないで」と声を掛ければいいだけなのに、ベアトリスは後ろを振り向けない。

 また逃げることを選んでしまった。心の弱さを痛感する。

 行き場をなくし、仕方なくそのまま彷徨うように家に帰っ て いった。


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