ピュアダーク
 ベアトリスは机に向かって暫く座っていた。

 泣いても仕方がないと、涙をふき取ると、コンピューターの電源を入れる。

 そして何気なしに自分の苗字をネットで検索し始めた。

 ハイランド、タータン、バグパイプ、キルトといったキーワードが目に入る。

 そしてお城や湖が映りこんだ風景の画像も出てきた。

「この写真、幻をみたときの風景に似ている。私はここで生まれた? まさか……でもそうだとしたら私は外国人になってしまう。あれっ? そう言えばパトリックの名前も確か『マコーミック』だった」

 ベアトリスは同じように検索すると、自分と同じキーワードがひっかかり、はっとした。

 さらに検索を続けていると、パトリックという名前には貴族という意味があることを知った。

 さっと立ち上がり、部屋を飛び出してパトリックに駆け寄った。

「どうしたのそんなに慌てて、もしかして、お腹すいた? でも、あともうちょっと待ってね。アメリアももう少ししたら帰ってくると思うから」

 パトリックはお鍋をお玉でかき混ぜていた。

「パトリックはどこで生まれたの?」

「えっ、どこって、あそこだよ。ベアトリスが10歳まで住んでた場所だけど。どうしたの?」

「でも、マコーミックって名前は元々外国から来た名前だよね」

「ああ、昔先祖が移民してきたからね。血筋はそっち系ってことになるのかな。でもなんで急に?」

「じゃあ、私もそうなのかなって思って。そこはお城や湖が多いところだよね。それにパトリックって名前も貴族の意味が含まれていて高貴なイメージなんだね」

「おじいちゃんが言ってたんだけど、昔はそういう湖の側にあるお城に天上人が時々舞い降りてくるって聞いたことがあるんだ」

「天上人?」

「空の上に住む特別な身分の高い人たちってところかな。幸せをもたらし、心を満たしてくれる人々らしく、僕の先祖は天上人に特別にお使いするために選ばれた種族だって言ってた。天上人が現れると外敵から守ったり、身の回りの世話をする。その見返りに、特別な力を与えられるんだ。その名残りで僕も高貴な仲間入りを願ってパトリックって名付けられたのかも」

 これぐらい言っても差し支えないだろうと、パトリックは気軽に笑いながら話した。

 初めて聞く話に、ベアトリスは真剣に聞いていた。

「外敵から守るって何?」

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