ピュアダーク
 ヴィンセントは自分の部屋でコードレスフォーンを掴み、睨んでは、ベッドに寝転がり、また起き上がってはナンバーをプッシュすべきか悩んでいた。

 ベアトリスと話をするには電話しかない。

 しかし、電話をかけたところで何を話せばいいのかもわからない。

 誤解を解こうにも、またサラが側に居なければベアトリスに近づけない。

 そうすればまた同じことの繰り返しになり、再びぬかるみにはまり込むと思うと、自分でもどうしていいかわからなかった。

 結局は掛けられず諦める。

 そしてその受話器を宙に投げると、跳ね返ってきた。

「いつからそこにいるんだよ。笑いたければ笑え」

「やっぱり気がついていたか」

 ブラムが姿を現した。

「今日は一体何の用だ。またかき回しに来たのか」

「コールの動きもぱったりと止まって、ちょっと退屈だから遊びに来た。さっきベアトリスにも会ってきたんだけどね」

「えっ、なんでそんなことを」

「大丈夫大丈夫、ばれてないから」

 ブラムはヴィンセントの目から見てもいい加減に見えた。

「一体、あんたの目的はなんだ」

「私の目的? それはもちろんベアトリスの運命を見守ること。それが私の使命」

「その割には仕事がいい加減じゃないか」

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