ピュアダーク
 ランチを忘れ、ジェニファーも側にいない。

 こんなとき一人でカフェテリアで食事をするのは勇気がいった。

 お弁当を持っていたら、教室の隅やあまり人が来ないところでぱっと済ませられたが、大勢の中に混じって一人で食べるのは何かを言われているのではと被害妄想に陥る。

 だが、お腹が空ききっている今、本能には勝てなかった。

 空腹と疲れを抱いて居たら、また全てを夢の出来事に変換させてしまう。

 何が起こったか、頭を整理させるためにもまずは腹ごしらえからとベアトリスはカフェテリアへ向かった。

 口にできるものなら何でもいい。

 トレイを手にして、列につく。自分の好きなものを取るセルフサービス式なので、適当に食べ物を取り支払いを済ませ、空いている席を探した。

 ガヤガヤとグループになって皆楽しそうに食べている。目立たない場所を選ぼうと探していると、そこに黒髪のポニーテールの女の子が友達とわいわいしながら食事をしている姿が目に入った。

 朝出会ったサラだった。

 トイレで話しかけられた言葉、それが自分自身の疑問を解くカギになるかもしれないと、ベアトリスは迷わず彼女に近づいた。

「サラ……だよね」

 ベアトリスの声にサラが振り返る。

 咄嗟に手を口にあて驚き、さっと席を立った。

「はい、ベアトリス様!私に御用でしょうか」

 その声が大きく周りの注目を浴びて、ベアトリスは急に落ち着かなくなった。

「そんな大きな声を出さないで。それにベアトリス様なんて呼ばないで」

 ベアトリスがあたふたしてる傍で、サラは全く気にもせず、どこか嬉しそうに胸をはっていた。

 その周りで席についていたサラの友達は目を見開いて驚いていた。

「ベアトリス様もお食事ですか。良かったら私の隣に」

 サラは隣に座っていた友達を気が利かないとばかり押しのけ、その椅子を提供した。

 押しのけられた女の子も、どうぞとおどおどと手を差し伸べる。

 こうなるとベアトリスは言われるままに腰掛けた。

 テーブルにトレイを置く。

 サラは得意げな顔をしてベアトリスの横に座った。

 周りにいたサラの三人の友達はまじまじとベアトリスを見つめていた。

 ベアトリスは居心地悪く、やけくそで開き直った。

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