ピュアダーク
第十二章
39 実行のために
学校が終われば、その日のやるせなさで疲労感が現れる。
背中を丸めて、ヴィンセントは家路についていた。
家に戻ってみると、ドライブウエイに見慣れない車があったのを見て不審に思った。
コンパクトカーで小さいが、シルバー色が光っていて比較的新しく見え、きれいな車体だった。
「客でも来てるのか」
不思議に思いながら家に入ると、リチャードがニコッと笑って出迎えた。
「よぉ、ヴィンセント、今帰りか」
「ああ、表のあの車は誰のだ?」
リチャードがヴィンセントに向かって何かを投げつけた。
ヴィンセントは慌てずパシッと掴む。
「これは、車のカギ……」
「そうだ、お前の車だ。ちょうど同僚が売りに出すとかいって、いい値段で譲ってもらったんだ。車、欲しかったんだろ」
「親父……」
ヴィンセントはただ突っ立ってリチャードの顔を凝視していた。
「なんだ、気に入らないのか」
「何言ってんだよ、気に入らないわけがないだろ」
ヴィンセントは嬉しさのあまり、駆け寄ってリチャードに抱きついていた。
「最高だぜ。ありがとう」
突然のプレゼントに素直に喜びを表せば、運がむいてきたように心が少し軽くなった。
「ああ、これからお前も素早く移動するには何かと手段が必要だからな。コールの動きが読めないだけに、お前にも手伝ってもらうことがあるかもしれない。何かあったときはそいつで駆けつけてくれ」
「コールはあれから接触してきたのか?」
「いや、直接はない。だが、影を使った犯罪は増えている。まるで私に仕事を増やさせるかのようだ。奴は絶対何かを企んでいる。全く気が抜けない状態だ。そっちは何もかわりないか」
「ああ、一人、変なクラスメートがいるんだが、ダークライトや影の気配は全く感じられない。だけど、やたらと俺に絡んでくる。かといって危害を加える訳でもないんだ」
「お前は私に似て女性にもてるからやっかんでるんじゃないのか。もうすぐプロムもあるしな」
リチャードは茶化していた。
「何のん気なこと言ってんだよ」
「プロムデートは決まったのか。ベアトリスを誘えないのが残念だが」
「余計なお世話だ。放っておいてくれ」
ヴィンセントはプロムの計画のことをリチャードに知られたら困ると思うと、突っ張ってしまった。
「すまない。とにかく、気だけは抜くな」
リチャードは仕事が残ってると言ってまた出かけていった。
ヴィンセントはカギを見つめる。リチャードの気持ちが有難いと思いつつ、それに反してよからぬことを企んで後ろめたかった。
背中を丸めて、ヴィンセントは家路についていた。
家に戻ってみると、ドライブウエイに見慣れない車があったのを見て不審に思った。
コンパクトカーで小さいが、シルバー色が光っていて比較的新しく見え、きれいな車体だった。
「客でも来てるのか」
不思議に思いながら家に入ると、リチャードがニコッと笑って出迎えた。
「よぉ、ヴィンセント、今帰りか」
「ああ、表のあの車は誰のだ?」
リチャードがヴィンセントに向かって何かを投げつけた。
ヴィンセントは慌てずパシッと掴む。
「これは、車のカギ……」
「そうだ、お前の車だ。ちょうど同僚が売りに出すとかいって、いい値段で譲ってもらったんだ。車、欲しかったんだろ」
「親父……」
ヴィンセントはただ突っ立ってリチャードの顔を凝視していた。
「なんだ、気に入らないのか」
「何言ってんだよ、気に入らないわけがないだろ」
ヴィンセントは嬉しさのあまり、駆け寄ってリチャードに抱きついていた。
「最高だぜ。ありがとう」
突然のプレゼントに素直に喜びを表せば、運がむいてきたように心が少し軽くなった。
「ああ、これからお前も素早く移動するには何かと手段が必要だからな。コールの動きが読めないだけに、お前にも手伝ってもらうことがあるかもしれない。何かあったときはそいつで駆けつけてくれ」
「コールはあれから接触してきたのか?」
「いや、直接はない。だが、影を使った犯罪は増えている。まるで私に仕事を増やさせるかのようだ。奴は絶対何かを企んでいる。全く気が抜けない状態だ。そっちは何もかわりないか」
「ああ、一人、変なクラスメートがいるんだが、ダークライトや影の気配は全く感じられない。だけど、やたらと俺に絡んでくる。かといって危害を加える訳でもないんだ」
「お前は私に似て女性にもてるからやっかんでるんじゃないのか。もうすぐプロムもあるしな」
リチャードは茶化していた。
「何のん気なこと言ってんだよ」
「プロムデートは決まったのか。ベアトリスを誘えないのが残念だが」
「余計なお世話だ。放っておいてくれ」
ヴィンセントはプロムの計画のことをリチャードに知られたら困ると思うと、突っ張ってしまった。
「すまない。とにかく、気だけは抜くな」
リチャードは仕事が残ってると言ってまた出かけていった。
ヴィンセントはカギを見つめる。リチャードの気持ちが有難いと思いつつ、それに反してよからぬことを企んで後ろめたかった。