ピュアダーク
 夕方、食卓を囲んでベアトリス、パトリック、アメリアが食事をしていた。

「パトリック、いつも夕食まで作って貰ってありがとう。とても助かるわ」

 アメリアが言った。

「お世話になってますし、当然です。でもお味の方はアメリアの腕には敵いません」

「そんなことない。とても美味しい。ねぇ、ベアトリス」

「えっ、あ、うん」

 ベアトリスは突然振られて生半可に答えてしまった。

「最近元気がないけど学校で何かあったの」

 アメリアにはヴィンセントが絡んでいると容易に推測できた。

「ううん、なんでもない。学校を暫く休んでたから勉強が遅れてちょっと心配なだけ」

「なんだ、そんなことだったら、僕が教えてあげるよ」

 パトリックは得意分野だと胸を張っていた。

「もうすぐプロムがあるけど、それが終わったらファイナルイグザムも迫ってくるからね。でもベアトリスは大丈夫よ。あなたは充分にトップクラスよ。心配しなくてもあなたならちゃんとできる」

「えっ、なんだかアメリアらしくない言葉。今まであんなに厳しかったのに、急にどうしたの」

「今までが厳しすぎたのね。ほんとにごめんね。親代わりになろうと私も必死だった。でも私の手から離れる時期が来たように思うわ。それだけよ。ところで、プロムはパトリックと行くんでしょ。その日、門限はないからゆっくり楽しんできなさい。パトリックならベアトリスのこと任せられるから、私も安心だわ」 

 言い難そうに、それでもこの先のことを示唆しながら遠まわしにアメリアは伝えていた。

 だがまだパトリックとの結婚に賛成したとははっきり言葉にできなかった。

「アメリアにそこまで信頼されて僕嬉しいです。一生懸命ベアトリスをエスコートします。それからあの賭けのこと、ベアトリス忘れてないよね」

「賭け?」

 アメリアが質問した。

「なんでもベアトリスは一大決心をするそうで、それの賭けなんです」

 ベアトリスは無表情でお皿の食べ物を見つめていた。

 その隣でパトリックは自信たっぷりと勝利をすでに感じにこやかに食事を取っている。

 アメリアは何か釈然とせずベアトリスが壊れてしまいそうで不安になっていた。

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