ピュアダーク
 食事の後、ダイニングエリアのテーブルに着いてパトリックが早速ベアトリスの勉強をみていた。

 ベアトリスが心配するほど勉強は全く遅れてなかった。

 スラスラと問題を解いていくベアトリスに、パトリックの方が感心するほどだった。

「さすがベアトリス。これなら何も心配することないと思うよ。次こっちの問題もやってみる?」

「ねぇ、パトリック。もし私の両親が生きてたら、私ずっとあの町に住んでたのかな」

「どうしたんだい、急に」

「こっちに来なければ、今背負ってることで色々悩まなくてすんだのかなって」

「過去のことはもうどうしようもないだろ。今の方が大事だよ。これからベアトリスは幸せになればいい。そのために僕がいる」

 パトリックは胸を張っていつもの前向きな姿勢を取っていた。

「でも、過去のこと私、あまりにも覚えてないんだ。両親の事故のことも何一つ知らされてないし、パパとママの写真もいつの間にか消えてるの。あの町で最後に過ごした夏の思い出が特に全く思い出せない。パトリックは覚えてる? あの最後の夏、私と何をしたの?」

「何をしたって、一緒に遊んだよ。木に登ったり、草原を走ったりしてたかな」

「他の友達は居なかったの?」

「近所の子供達と多分遊んだと思うよ。だけど僕はいつも君の後ばかり追いかけてたから、他の子と遊んだ記憶があまりないってとこかな」

「またあそこに戻れば、何か思い出すだすかな」

「今度一緒に帰ろうか。僕の両親もベアトリスの顔見たら喜ぶと思う」

「そう言えば、私がパトリックと初めて仲良くなったとき、パトリックのご両親にあまり好かれてなかったような気がしたんだ。でもあの夏が過ぎてから、何かが変わった。うちの親とも急に仲良くなったし、そして私の知らないところで親同士が勝手に決めた婚約。なぜ私はパトリックと婚約させられたの? あんな小さいうちから婚約だなんてよほどの理由がない限りおかしい」

「どうしたんだい、今さらそんなこと」

 パトリックは詮索が深くなっていくことにあまり良い顔をしなかった。

< 295 / 405 >

この作品をシェア

pagetop