ピュアダーク
 床に転がっている自分に気がつくと、本当に夢だったと現実に引き戻され虚脱感に襲われた。

 ──とてもリアルだった。忘れようと思っていたときに皮肉すぎる。

 ベアトリスは、所詮、夢は夢として、現実ではないことをあっさりと受け止めると、体を起こしまた暫くそこで座り込んでいた。

 その姿は魂がぬけてしまった抜け殻のようでもあり、自分の意思をもたずにただ体が存在している状態だった。

 ──夢を見たからといって何も変わるわけはない。

 ヴィンセントが想いを伝えても夢の中では全く届かず、益々空虚なものとなった。

 皮肉にもベアトリスはその想いを閉じ込める選択をする。

 想いだけじゃなく自分自身をも否定した。

 ベアトリスの瞳から輝きが失われていた。

 何も関わりたくないと自ら全てを放棄した虚しさが現れる。

 自分に臆病になり、自分を否定することで全てのことを妄想で終わらせようとする。

 それが一番楽な対処方法だった。

 ベアトリスはこの時点でもう壊れていた。

 これ以上の問題を持ち込まれたら再起不能な状態まで追い込まれるくらい、心の中は苦しさで飽和状態になっていた。

 ──ポールが言っていた目を瞑っているだけで全ての悩みから解放されるってどういうことなんだろう。それは私を本当に解放してくれるものなんだろうか。

 本当の意味も知らずに、ベアトリスは楽な道ばかりを模索する。そしてゆっくり立ち上がり、部屋を出る前にもう一度物置小屋を見渡すと、それが最後とでもいうように「さようなら」と呟いた。

 静かにドアを閉め、クラスへと向かった。

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