ピュアダーク
 アメリアはその頃、予期せぬ渋滞に巻き込まれ、迂回をして遠回りをせざるを得なかった。

 信号に何度もひっかかり、すぐに帰れずアメリアはイライラしていた。

 そんな時、サイドウォークを高校生らしい男の子が、ロングストレートの黒髪の女性に腕を組まれながら後方に向かって歩いているのが目に入る。

 女性が年上に見えたので、アンバランスなカップルだと暫く眺めていた。

 信号が変わり、アクセルを踏む瞬間、ふとバックミラーを見ると、赤毛のコールのような姿が目に飛び込んだ。

 はっとして後ろを振り返るが、そこにはコールの姿はなく、さっき見たカップルが歩いているだけだった。

 もたもたしてると思われ、後ろからクラクションを鳴らされて、アメリアは慌てて車を走らせた。

 見間違えたのかと半信半疑ながらコールが身近にいることを再認識させられて寿命が縮まった思いだった。

 暫く車を走らせもう少しで帰宅というときだった。

 不意に見たバックミラーに写ったものに再び突然肝を冷やされた。

「ブラム。脅かさないでよ。それに車の中ではシートベルト締めてよね」

 後部座席にベールを被ったブラムが腕を組んでふんぞり返って座っていた。

「麗しのアメリア。君は相変わらずつっけんどんだ。まるでトゲに囲まれたバラのようだよ。美しいが近寄ると痛い目にあう」

「ところで要件は何? いい話? それとも悪い話?」

「理由なしに君に会いに来てはいけないのかい? 折角地上界に降りているんだ、また昔みたいにどこかへ一緒に出かけないか。あの時の君は私に甘えてとてもかわいかった」

「そんな昔のこと。それに私はあなたに裏切られたも同然。あなたは私を捨てた」

「誤解だ。だがそう思われても仕方ないことはしてしまったのは認める。それでも心の底ではまだ私を愛してくれてるだろう」

「そんなことはどうでもいいわ。とにかく今はコールのことが気がかり。何か情報を得たの?」

「安心しなさい。コールはベアトリスのライフクリスタルを手に入れられない。彼は失敗する」

「それに越したことはないけど、なぜそれが判るの?」

「私の勘とでも言っておこうか」

< 313 / 405 >

この作品をシェア

pagetop