ピュアダーク
「だからできる限りのことをしているじゃないか。だが派手に手助けができない、君の言う通りばれれば私の立場が危うくなるからね。私は最後の手段で何かあれば自ら手を下すが、それまではサポートという形を取らせて貰う」

「それでもいいわ。手助けが必要なのは素直に認める」

「しかしいつまでこういうことが続くのかね。君にも限度というのがあるだろう」

「その後はパトリックが引き継いでくれる。二人はそのうち……」

「結婚っていうことか。パトリックもあの時隠れて我々のやり取りを見ていた唯一事情を知るディムライト。しかもベアトリスに惚れている。中々好都合な存在だ」

「そうなの…… あの時彼もあそこにいたのね。だから何もかも知っていたと言う訳ね」

「しかし、ベアトリスは果たして結婚に前向きなのかい? ヴィンセントもこのまま黙って見てるとは思えないが」

「それこそあなたが言う、何かを犠牲にしてまで何かをやり遂げるってことじゃないのかしら。ベアトリスを守るにはヴィンセントには理解して貰うしかない。ヴィンセントが近づけなければベアトリスはいずれ諦め、パトリックを受け入れるようになるわ。あれだけ愛されて大切にされたら女っていつしか心なびくものよ」

「君もそういう人がいるのかい?」

「もしいたらあなたは気が気でなくなって心配?」

「ああ、もちろん」

「そういうときだけ都合がいいもんだわ。さんざん放っておいたくせに」

 嫌味をちくりと言いながらもアメリアの表情から寂しげな陰りがみえた。

 アメリアの車が家に着くと、ブラムは無理に作ったような微笑みを浮かべてミストを蹴散らすように消えていった。

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