ピュアダーク
 本番当日まではそれぞれの思いの中過ぎていく。

 そして決戦の時がとうとうやって来た。

 この日に何かを期待し、企んでいるものは真剣勝負で挑む。

 一番中心人物であるベアトリスだけが、始まる前から早く終わって家に戻って来たいと願っては憂鬱になっていた。

 そんな当日の土曜日の遅い朝のこと。

 パトリックの作ったブランチをベアトリスとアメリアは食べていた。

「夕方6時からでしょ、プロム。ここは何時に出るつもり?」

 アメリアが聞いた。

「会場まで余裕をもって3,40分としたら、5時過ぎくらいかな。他の参加者はグループでその前にどこかで集まってると思うけど、ベアトリスは行かなくていいのかい」

 パトリックはどこへでもお供すると嬉しくてたまらない様子で浮かれていた。

「私はただ参加するだけだから、直接そこに行くだけでいい。それにあまり長居もしたくない」

 ベアトリスは対照的に、元気がない声でぼそぼそ答えた。

「あら、折角のプロムなのよ。大人の仲間入り、豪華なデートができるチャンスよ。きっと行けば楽しくなるわ。そしてパトリックが完璧にエスコートしてくれ る。思いっきり甘えてくればいいのよ」

「アメリア、なんかほんとに変わった。以前ならそんなこと絶対言わなかった。よほどパトリックのことが気に入ったのね(結婚を認めるくらい)」

 ベアトリスの言葉で今度はアメリアが黙り込んでしまった。

 二人の仲を取り繕うと言い過ぎてしまったと自分でも不自然さに気がついていた。

「やだな、二人ともどうして暗くなるの。僕はすごく楽しみでどれだけこの日を待ってたことか。今夜は必ず素晴らしい夜にすることを誓うよ。僕のタキシード姿を見たらベアトリスだって放っておけないんだから」

「それじゃ私も後でベアトリスのドレスアップの手伝いをするわ。パトリックがドキドキするくらいね」

 アメリアは気を取り直して笑顔をベアトリスに向けた。

 ベアトリスも二人に合わせようと笑顔を作る。

 そしてパトリックを見つめる。

「そうよね、私も今夜は楽しむようにするわ。自分の想像もつかないことが待ってるかもしれない」

「そうだよ。僕は絶対君にがっかりなんてさせないからね」

 ベアトリスはパトリックの嬉しそうに笑う笑顔を見て、自分が受け入れたことなんだと再確認していた。

 パトリックを好きになろうと自分に言い聞かせているようだった。

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