ピュアダーク
 ヴィンセントも何とかしなければと自分のグラスを手にして宙にあげる。

「今夜という日が素晴らしい日となるように、僕も乾杯」

 ヴィンセントがそういうと、パトリックはそれにのせられてニヤリと笑った。

「ああ、そうだな。今夜は本当に素晴らしい日だよ。特にベアトリスと僕にとっては。乾杯しなくっちゃな」

 パトリックはベアトリスとグラスを合わせた。

 ヴィンセントはパトリックの鼻の付く態度に腹を立てながらも、とにかくそれを飲めと歯を食いしばって耐えていた。

 そしてパトリックが飲み始めると、ベアトリスもつられて飲みだした。

 ヴィンセントもサラも固唾を呑んでその様子を見ていた。

 その時パトリックはふとこの状況がおかしいことに気がついた。

 ──ちょっと待て、今ここにベアトリスに負の感情を持っているあの女性がいない。しかし、なぜヴィンセントはこんなにベアトリスの近くで平然としていられるんだ。まさか、負の感情を持っているのはサラなのか?

 パトリックは半分も飲まないうちにグラスを置いた。

 ヴィンセントはチェッと小さく舌打ちする。

 ベアトリスも全てを飲み干してないことにサラも焦りを感じ出した。

 もう勢いで実行するしかないとサラが立ち上がった。

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