ピュアダーク
「ベアトリス、ちょっと付き合ってくれない」

「ちょっと待って、どこへ行くんだ」

 パトリックがサラに警戒の眼差しを向けた。

「やだ、女性にそんなこと聞くなんて。もちろん化粧室に決まってるでしょ」

 パトリックが何も言えないまま、サラはベアトリスの手を取って無理やり引っ張っていった。

 そしてヴィンセントに何かを伝えるような視線を投げかけた。

 計画の実行の合図だった。

 残されたヴィンセントとパトリックは対峙し合う。

「正直に話せ。何か企んでいるんじゃないのか」

 パトリックが噛み付かんばかりに攻撃の目を向けた。

「なんのことだ」

「なぜベアトリスの側に平然とお前がいられるんだ。サラが負の感情を持ってるからじゃないのか」

「だったらどうなんだよ」

「それを利用してお前が何か企んでいるってことじゃないのか」

「俺は別に何もしてないじゃないか」

「ああ、今はな。でももう何をしたところで無駄さ。ベアトリスは僕の側にいたいと言ってくれた。それに僕との結婚を前向きに考えてくれている。だからもう僕たちの邪魔をしないでくれ」

「俺はまだ彼女の口からは何も聞いていない。お前が諦め悪いように、俺も諦めが悪いものでね」

 二人が険悪な雰囲気の中、コールとアンバーが席に戻ってきた。

「おっ、なんか一触即発って感じだな。ところでベアトリスはどうした?」

「トイレ!」

 ヴィンセントとパトリックは声を揃えて言った。二人はお互いを殴り飛ばしたいほどに苛立っていた。

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