ピュアダーク
「二人は知り合いだったの? そしてあの夏ヴィンセントが私の住んでた町に来ていたの? 私も小さい頃にヴィンセントに会ってたってことなの?」

 ベアトリスはもう真実から逃げられなくなった。

 ヴィンセントとパトリックを交互に見て、失望を抱いたように潤んだ瞳で震えている。

 沈黙が暫く続く。

 パトリックが近づいてベアトリスに触れようとする。

「触らないで、側に来ないで」

 ベアトリスはコールが言っていた言葉を思い出した。

『その事故、ほんとに事故だったと思うかい? そしてどうして子供の時に婚約させられたかも不思議に思わないのかい?』

 頭の中が混乱する。

 一つ判ったことは、自分は何かに利用されているということだった。

 ──だったら私は一体何者?

「ベアトリス、落ち着いて」

 パトリックが焦りながら対応する。

「落ち着くのはお前の方だろうが」

 ヴィンセントがつっこんだ。

「お前は黙っていろ。元はといえば全てお前が引き起こしたこと。お前が卑劣な方法でベアトリスに手を出そうとしたからこうなった」

「俺はただ、ベアトリスと二人きりになりたかったんだ」

「だからといってこんな手を使うことないだろう。卑怯者」

「こんな手でも使わないと二人っきりになれなかったんだよ」

 パトリックは腹立たしさでヴィンセントに殴りかかる。

 不意をつかれてヴィンセントは頬を殴られると、一気に怒りが湧き起こり、応戦した。

 目の前で激しい殴り合いをする二人に、ベアトリスの心に怒りが吹き荒れた。

 それと同時に眠っていた力が呼び覚まされる。

「もう二人とも止めて!」

 そう叫んだとき、眩しいばかりの閃光が爆発のごとくベアトリスの体から四方八方に放たれた。

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