ピュアダーク
「いえ、その、とにかくあの人たちは、あなたとは合いません」

 サラがそう言い切ると、ベアトリスは苦笑いになった。

「それは私が一番わかってるのよ。でもあの人たちが優しいから仲良くしてくれるの」

「だから、それが偽りなんです。ベアトリスは自信なさ過ぎです。あなたほどの方があんなのに心を支配されて、私は悔しいです。もっと自信持って下さい。あなたはもっと輝けるお人なんです。そうじゃないと私、納得できません!」

 サラは急に怒り出し、残りのアイスクリームがなくなるまで黙々食べ続けた。

 ――え? 納得できないってどういうこと?

 ベアトリスはサラの考えてることにどう返していいかわからず、持って行きようのない気持ちで表情が強張った。

 下をうつむきアイスクリームをぼそぼそ食べていた。

 沈黙がさらに気まずくさせた。

 サラが最後の一口を食べ終わると、カランとスプーンを空の入れ物に入れた。

 両手を膝に乗せ、失望したように体を震わせている。

 ふと顔をあげ、口を開くが、声がともなってない。

 また顔をそらして一文字にぎゅっと口を結び、その様子は何かに葛藤していた。

「サラ、何か他に言いたいことでもあるんじゃないの?」

 ベアトリスは何を言われても覚悟が出来てるとばかり、穏やかに問いかける。

「いえ、私、やっぱりでしゃばったことをしてしまいました。私が言うべきことじゃなかったんです。でもこのままではあなたは自信がないままで見ていて歯がゆいし、私どうしたらいいのかわからなくなって」

「サラが悩むことじゃないと思うんだけど…… どうしてそこまで私のことを心配してくれるの」

 有難いのか迷惑なのかどう判断してよいのか、ベアトリスの顔は半分笑い、半分気分を害して引き攣った。

 サラもまた、黙り込み口を閉ざしていた。
 
 さっきまで気にならなかった周りの笑い声が突然耳に響きだした。

 このテーブルだけ暗く闇がつきまとってるようで、皆から変だと思われて笑われたのかとベアトリスは辺りを見回した。

「人目を気にしすぎです」

 サラがぼそっと言った。

 ベアトリスは言葉に反応してハッとしてしまう。

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