ピュアダーク
 ベアトリスは電話の受話器を投げつけ必死に逃げる。

「ベアトリス、どうしたの? 何があったの」

 ただならぬ事態にアメリアは顔を青ざめ、車に飛び乗りホテルへと向かった。

「あの時と同じだ」

 ベアトリスは全てが夢じゃなかったと気がついた。

「ベアトリス!」
 
 パトリックがデバイスを取り出し、光の剣を構えて影に立ち向かう。

 ベアトリスは身を縮めながらそれを見ていた。

 影はパトリックの攻撃をかわし、そして容赦なくパトリックに襲い掛かった。

 そこへヴィンセントも加わり、手だけ黒く変化させ長い爪を影に向かって引っ掻いた。

 影はそれも避けるがすぱっと体の一部が切られて動きが鈍くなった。

 一瞬の怯みをついてパトリックが影の頭に剣を貫くと、影は消滅していった。

 ベアトリスは息をするのを忘れるぐらい、その光景に目を見開き、二人を凝視していた。

「ベアトリス大丈夫か」

 パトリックが声をかける。

 ヴィンセントも心配そうにベアトリスを見つめている。

「嫌っ、側に来ないで、お願い、一人にして」

 ベアトリスは走り出す。

 混乱して怖くなり、この状態でまともに二人と話などできないと思うと逃げることしかできなかった。

「ベアトリス!」

 ヴィンセントもパトリックも同時に叫んでいた。

 コールは一部始終見ていた。

 影が自ら襲ったことでベアトリスのシールドがなくなっていることに気がつくと、チャンスだとばかりに笑みを浮かべ、その瞳は邪悪に輝きだした。

 決行の時が来たと脳内で歓喜の音楽が流れていた。

 ベアトリスは無我夢中でホテルの外に飛び出すと、そこで人とぶつかってしまった。

「ベアトリス…… じゃないか」

「あなたは、ヴィンセントのお父さん」

 ──どういうことだ、ベアトリスのシールドが完全に解除されている。

 ヴィンセントとパトリックが後を追ってくる姿にリチャードが気がついた。

 「何かあったのかい」

 優しそうな目でベアトリスを気遣うが、ベアトリスは急に怯え出した。

 ──この人、私の両親を殺した?

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