ピュアダーク
 全く明かりのない豪邸の前でベアトリスを乗せた車は停まった。

 大きなその屋敷は暗闇で何かに取り憑かれた雰囲気を持ち、ベアトリスは息を飲んだ。

 心に浮かんだ感情は素直に怖い──。

「まだ話が聞きたいんだろ、だったらついてこい。次はもっと面白いものが見られるぜ」

 コールはすーっと暗闇にすいこまれるように豪邸の中に消えていく。

 辺りは闇そのものだった。

 時折風が吹くと草木がすれた音に脅かされ、ベアトリスもドキッとした弾みでコールの後について行った。

 大きくて立派な建物だが、外見と同様、中も古ぼけてどこをみても不気味だった。

 床には大きく何かをこぼした黒ずんだ染みが浮き上がってみえた。

 深く考えないように急ぎ足でコールの側についた。

 コールが案内した部屋へ入ると、薄暗いが蝋燭の光がぼんやりと部屋を照らし、ベッドに人が寝ている姿とその側で女性が座っているのが見えた。

「あっ、意外と簡単につれて来たんだね。その子がベアトリスなんだね」

 マーサがベアトリスの前に立ちまじまじと顔を見つめた。

 ベアトリスはたじろぐ。

「こいつはマーサだ。俺はちょっとこれから支度があるので、それまでこいつと退屈しのぎに話してな」

「一体何をするつもり?」

 ベアトリスはここまで来ておいて後悔で一杯だった。

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