ピュアダーク
「そんなに驚くことでもない。私は少しベアトリスの苦しみを和らげようと試みただけだ。自己紹介も兼ねてだったが。だが無視されてしまったようだがね。おっと、こんなことはしてられない。ライフクリスタルを奪われたらこの空間でもベアトリスの存在が危うくなってしまう」

「おいおい、勝手なおしゃべりは遠慮して貰おうか。それよりもどうすればこのライフクリスタルが完全になるんだ。教えろ」

 コールはブラムに飛び掛るが、ブラムはすっと姿を消したように避ける。

「俺よりすばしっこいじゃないか」

「コール、そなたは私を捕まえることはできない。以前もそうであっただろう。私の気を掴みながら見つけることもできなかった」

「おまえ、あの時の奴か。やはりからかっていたのか。くそー」

 コールは意地になりブラムを追いかけるが何度捕まえようとしても手を延ばしたとたんに姿を消して、違うところに現れた。

「ブラム、遊んでないでベアトリスを助けて」

 アメリアが叫んだ。

「パトリック、ベアトリスをこっちに連れて来い」

「はい、ブラム様」

 パトリックはベアトリスを抱きかかえ、ブラムの側に運ぶ。

 ブラムは空中で息を吹きかけやわらかな白い霧を発生させる。

 それをかき集めベッドのようなものを作り上げた。

 パトリックはベアトリスをその上に寝かせる。

 そのベッドはふかふかとした真綿でできた空に浮かんだ雲のように見えた。

「ベアトリス、寝心地はどうだい」

 ブラムが聞くと、ベアトリスは寝心地のよさを弱々しい笑顔で表現していた。

「かなり弱ってきたみたいだ。言葉も発せられないか。これは早くしないとヤバイかもしれない」

「ブラム様、ベアトリスは助かるんですか。教えて下さい」

 パトリックが不安でたまらない表情を見せる。

「コールの持ってるライフクリスタルを元に戻さない限り、ベアトリスはこのままでは消滅してしまう」

 コール以外の全てのものは嘆いた。

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