ピュアダーク
 顔を近づけそっとトーストを指で撫でてみれば、ラメが入った白い粉が指先に付着する。

 人差し指と親指を重ねこすり合わせてみた。

 さらさらしたパウダーのようだった。

 牛乳は表面がキラキラとしている。そっと持ち上げて軽くまわすように振ってみた。するとそれは静かに沈んで中に浸透していった。

「これって一体何? カビ? でもこんなにキラキラするものじゃないし、今日は特別のスパイスでもかかっていたってこと? だけどこんなの見たら怪しすぎて食べる気なくしてしまう。何か間違いで変なものがふりかかったんだろうか」

 そして茶色い袋に入っていたお弁当を覗いて見た。アルミホイルにつつまれたサンドイッチ、紙パックのフルーツジュース、手作りのクッキーが入っていた。

 これは何も変化が見られなかった。

 ベアトリスは首をあげ、天井を見つめる。何かの塗料が上からおちてきたのかとも考えたが、落ちてきたとしてもテーブルの上はどこもキラキラしていない。やはりおかしいと首をかしげた。

 しかし、ふいに時計を見れば、アメリアの帰宅時間が迫っていた。

 考えている暇はない。証拠隠滅──。

 それが頭によぎると、皿とグラスをとり、流しの水を出しっぱなしにする。

 ディスポーサーの中へまずミルクを流し残りは突っ込んだ。

 そしてスイッチを入れるとそれらは豪快な音を立てて全てが流れていった。

 少し勿体無かったが、仕方がない。

 次、サンドイッチの紙袋からリンゴを取り出して、フルーツ入れの籠に戻し、紙パックのフルーツジュースは冷蔵庫に、クッキーは迷った挙句口の中、サンドイッチはどうしようかと悩んでいるときに、玄関のドアが開いた。

 アメリアが帰って来た。

 ベアトリスはサンドイッチを後ろに隠し、平常心を装いアメリアの前に姿を見せた。

「ハーイ、アメリア」

 ベアトリスの口がクッキーでもごもごしている。

「あら、つまみ食い? すぐに食事の用意するからちょっと待ってて。あれ? ベアトリス、髪がなんか変ね」

 アメリアの顔色が急に変わった。

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