ピュアダーク
「ベアトリス、君を見ていると、妻を思い出す。妻にここまで似ているとは驚きだ」

「当たり前だろ、ベアトリスはあんた達の子供なんだから」

 ヴィンセントの言葉にフィンレイはため息を一つこぼした。

「私をどうする気ですか。いえ、あなたはどうしたいんですか?」

 ベアトリスは挑むように問いかけた。

「わからない、いや、答えを出そうにも出せないのだ」

 フィンレイは深く苦しんでいるのか、締め付けられた顔をしていた。

 ベアトリスは不思議と落ち着いてフィンレイの気持ちを責めはしなかった。

「私が生まれたせいであなたの大切な人が命を落としてしまった。あなたには辛く、そして私が腹立たしかったことでしょう。だけど私は父と母に感謝します。私は生まれてきてよかったって、今強く思うんです。こんな私を愛してくれる人がいる。私もその人を愛しています。生まれてきたお陰で私は素晴らしいものを手に入れたと思ってます。それがこの上ない幸せであり、自分が今生きてる証。あなたがどう判断しようとこの気持ちを手に入れた今、私はどんな結果になろうと、もうどうでもよくなりました。あなたが立場上どうしても決断を下さなければならないのでしたら、私は喜んで抹殺されましょう。だけど、どうかヴィンセントは助けて下さい。彼は危険なダークライトではありません。まずは様子をみてから判断下さい」

「ベアトリスが抹殺されたら、俺が生きてても仕方ないだろ。それならブラムと同じ道を歩むよ」

 ヴィンセントはベアトリスの肩を強く抱く。

 フィンレイはかつての自分と妻の姿をオーバーラップさせた。

 この湖畔で同じように寄り添って気持ちを確かめ合ったことが前日のような出来事に思えてきた。

 その二人の気持ちをたたえるように、湖の水面は穏やかに波打ち光は踊るように反射して煌いている。

 フィンレイの気持ちもその湖の水面のように揺れ動いていた。

「かつて前例のないことになってしまった。ライフクリスタルを手にしたダークライトと抹殺の対象となるホワイトライト。しかも二人は愛し合っている。そして何より、そのホワイトライトが私の娘。どのように判断を下せばいいのか私が教えて欲しいくらいだ」

「あなたは何を大切にしたいんですか。ホワイトライトの掟ですか、それとも愛するものの幸せですか。あなたの一存で全てが動くのなら、あなたの思うことをすればいいだけです」

 ヴィンセントが問いかけた。

「私の思うこと?」

 フィンレイは目を閉じて心に浮かぶことを感じようとしていた。

「フィンレイ様、騙されてはいけません!」

 リーダー的存在のホワイトライトが突然フィンレイの側に姿を現した。

 目を細めてヴィンセントたちに焼印を押し付けるような睨みを向けた。

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