ピュアダーク
「ダークライトの言うことなど真に受けてはなりませぬ。この男は自分が助かりたいがためにフィンレイ様の心の操作をしようとしているだけです。ここは私にお任せ下さい」

「アンガス、どうしてそのように思う」

「それは昔からダークライトは我々の敵だからです」

「なによ、そういうのってただの先入観じゃない。本質を何も知らずに自分達の憶測だけで物事を判断するただの勝手で傲慢なだけ。ホワイトライトこそ、何も知ろうとしないでこの世界を操ろうとしている独裁者達よ。ダークライトよりも劣るわ」

 ベアトリスが反論した。

 自分でもわからないほどに気持ちが高ぶり、引っ込み思案で消極的だったことが嘘のようだった。

 心の中の熱きものが次から次へと湧き出てくる。

「なんだと。我々がダークライトよりも劣るだと。なんとも聞き捨てならん。貴様はダークライトに心奪われ落ちぶれたホワイトライトの恥さらしだ」

 フィンレイがアンガスにやめろと手を振りかざした。

 アンガスははっと気がつくようにたじろぐ。

 目の前のホワイトライトがフィンレイの実の娘だということをすっかり忘れていた。

「父親として聞きたくない辛い言葉だ、アンガス。だがお前の言いたいこともわかる」

「出すぎた真似をしまして申し訳ございません」

「しかし今の言葉で目が覚めた。礼を申すぞアンガス」

「それではこの者たちを抹殺……」

 ベアトリスとヴィンセントは固く抱き合い、覚悟を決めお互いを見つめた。

 そしてやはりこの時も幸せだという笑顔を見せあった。

「ベアトリス、やはりそなたは私の娘だ。アンガスの言葉で、父親として娘をこんなにけなされて腹が立ったよ。私はやはりそなたを抹殺できない。そして自分の娘が愛する男も同じだ。二人の抹殺はなしとする」

「フィンレイ様? 今なんと?」

 ベアトリスとヴィンセントは驚き、抱き合って飛び上がるように喜んだ。

< 395 / 405 >

この作品をシェア

pagetop