ピュアダーク
「アンガス、我々も長く生き過ぎた。同じことの繰り返しを永遠に続けるよりもたまには変化があってもよかろう。私はこの二人を信じる。よって、この二人に危害を加えるようであれば私が許さない」

 アンガスは驚きのあまり声がでなくなり、何度もフィンレイと二人のカップルたちの顔を交互に見ていた。

 フィンレイは二人に歩みよった。

「ヴィンセント、ダークライトでありながら、ホワイトライトのライフクリスタルを持つ者。お前は今日からピュアな心を持つダークライトとしてその力を人々を幸せにするために使って欲しい。そしてベアトリスを頼んだぞ」

「はい、仰せの通りに従います」

「ベアトリスよ、古いしがらみに惑わされ、お前を守れなかったことを許して欲しい。だがこれからはお前のような出で立ちを持ったものが、二度とこんな目に合わないようにホワイトライト界の掟を変えることを誓おう。それが私のできる償いだ」

「お父さん……」

 ベアトリスはそっと呼んでみた。

 フィンレイも耳に心地よく、嬉しさが隠せないでいた。

「そうだ、私はお前の父親だ。いつまでもな。どうする、二人はホワイトライト界で一緒に私の側で暮らすか? そうすれば永遠の時を過ごせる」

「いいえ、私は望みません。この地上で命ある限り一生懸命生きたいです。ヴィンセントと共に」

「そうか。わかった。だが私も出来る限りのことはしたい。父親としてな」

「ありがとうございます」

 三人は湖の煌きと同じような輝いた笑みを浮かべていた。

 ベアトリスはフィンレイにそっと抱きつく。

 少し照れた顔をして大切なものを扱うようにフィンレイも抱きしめ返した。

「さあ、思う場所へ行くが良い。そして、また後でな」

「ええ、また後で」

 ベアトリスがそういい残すとヴィンセントと共に消えた。

 フィンレイは二人が消えた後、暫く湖を眺め、愛しい人を思い出して心の中で何かを語っていた。

 そしてマントを翻し、アンガスに目で命令するとこの二人もまた姿を消していった。

 湖は静かにいつまでも水面を揺らがせてキラキラと輝いていた。

 愛するものを思う気持ちを代弁するかのように。

< 396 / 405 >

この作品をシェア

pagetop