ピュアダーク
 ヴィンセントはわざとらしく余計なお世話だとでも態度に表していたが、その後、安心しろと優しい笑みをパトリックに返した。

「だけどベアトリスはまたライトソルーションを飲まないとダークライトが寄ってくるかもしれない。ヴィンセントはまた近づけないのでは」

 アメリアが心配しだした。

「もうそんな心配はない。ベアトリスは思い人を呼び寄せる力を利用すればいいんだ。何かあったとき、俺を呼べば、すぐに駆けつけられる」

「なるほど、その手があったわね」

 アメリアはほっとした。もうあの厳しい表情はどこにもなく、吹っ切れたような笑顔があった。

「だけど、ほんとにヴィンセントは私が呼べばいつでも来てくれるの? 例えばお風呂入ってる最中とか、トイレ入ってたらどうする?」

「ええ? そこまで考えてなかった。その時は遠慮してくれ」

 真剣に答えるヴィンセントが皆おかしかった。

 笑いが辺りを包み込む。

 全ての不安が取り除かれ、皆の表情はそれぞれの幸せを手に入れた優しい笑顔になっていた。

 ドアを開けるとすっかり朝日が昇り、これからもっと暑くなりそうな照りつける太陽が出ていた。

 毎日見る太陽が、その時は一段と眩しく、皆目を細める。

 熱を帯びた太陽の光がシャワーを浴びせるように疲れ切った体を癒していくようだった。

 全てがふっきれたように天から降り注ぐ光を皆気持ちよく受けていた。
< 398 / 405 >

この作品をシェア

pagetop