ピュアダーク
昼休み、ベアトリスは用事があるとヴィンセントとジェニファーから離れた。
手にはしっかり自分で作った弁当を持って、そして人が来ない場所を求め校舎の裏を歩いていた。
少しばかりの芝生と木が数本立っているだけで、人も滅多に通らず、気兼ねなくゆっくりできるとベアトリスは木陰に腰を下ろす。その瞬間、ふっと息が洩れた。
以前はこんなことがなかったのに、ヴィンセントもジェニファーも人が変わったようだ。
物静かなヴィンセントは距離を置いてベアトリスと接していた。
ベアトリスとヴィンセントの間には必ずジェニファーが入り、ジェニファーがいなければヴィンセントはベアトリスには接触せず、話すことすら制限があるようによそよそしいものだった。
それがベアトリスとヴィンセントの間に障害がなくなったように、一気にヴィンセントが勝手に入り込んでくる。
そしてジェニファーの笑顔に陰りがでて、ベアトリスは彼女との友情に危機感を抱く。
ジェニファーと自分とでは比べ物にならない雲泥の差があるのは分かっている。
だが偶然とはいえ、ヴィンセントに肩を掴まれたことが拍車をかけて、ベアトリスの抑えていた感情をむき出しにした。
あの時のヴィンセントの瞳が目に焼きついている。吸い込まれそうなほどに神秘的に透き通り、求めるようにベアトリスを見つめる──。
「あんな目で見られたら、見られたら……」
茶色の紙袋に入ったピーナッツバター&ジェリーサンドイッチを取り出し、気持ちをかみ殺すようにかぶりつく。
ピーナッツバターが口の中でねとねとしていた。心の中と同じようにすっきりしない後味だった。
「ベアトリス様、ここで何をされてるんですか」
声をする方に顔を上げれば、遠慮がちに、屈んで顔を覗き込むものがいた。
栗色のさらさらしたロングヘアーを耳に引っ掛けながら、にこっと笑顔を見せている。
幼げで、まだ子供っぽいが、身につけている薄地の涼しげなスカートの裾のレースが清楚なお嬢様の雰囲気をかもし出していた。
「あなたは、確かええーっと、サラのお友達の」
「はい、グレイスです」
控えめににこっと笑い、ベアトリスの隣に腰掛けた。
手にはしっかり自分で作った弁当を持って、そして人が来ない場所を求め校舎の裏を歩いていた。
少しばかりの芝生と木が数本立っているだけで、人も滅多に通らず、気兼ねなくゆっくりできるとベアトリスは木陰に腰を下ろす。その瞬間、ふっと息が洩れた。
以前はこんなことがなかったのに、ヴィンセントもジェニファーも人が変わったようだ。
物静かなヴィンセントは距離を置いてベアトリスと接していた。
ベアトリスとヴィンセントの間には必ずジェニファーが入り、ジェニファーがいなければヴィンセントはベアトリスには接触せず、話すことすら制限があるようによそよそしいものだった。
それがベアトリスとヴィンセントの間に障害がなくなったように、一気にヴィンセントが勝手に入り込んでくる。
そしてジェニファーの笑顔に陰りがでて、ベアトリスは彼女との友情に危機感を抱く。
ジェニファーと自分とでは比べ物にならない雲泥の差があるのは分かっている。
だが偶然とはいえ、ヴィンセントに肩を掴まれたことが拍車をかけて、ベアトリスの抑えていた感情をむき出しにした。
あの時のヴィンセントの瞳が目に焼きついている。吸い込まれそうなほどに神秘的に透き通り、求めるようにベアトリスを見つめる──。
「あんな目で見られたら、見られたら……」
茶色の紙袋に入ったピーナッツバター&ジェリーサンドイッチを取り出し、気持ちをかみ殺すようにかぶりつく。
ピーナッツバターが口の中でねとねとしていた。心の中と同じようにすっきりしない後味だった。
「ベアトリス様、ここで何をされてるんですか」
声をする方に顔を上げれば、遠慮がちに、屈んで顔を覗き込むものがいた。
栗色のさらさらしたロングヘアーを耳に引っ掛けながら、にこっと笑顔を見せている。
幼げで、まだ子供っぽいが、身につけている薄地の涼しげなスカートの裾のレースが清楚なお嬢様の雰囲気をかもし出していた。
「あなたは、確かええーっと、サラのお友達の」
「はい、グレイスです」
控えめににこっと笑い、ベアトリスの隣に腰掛けた。