ピュアダーク
 喧嘩したと言われる三人は、花壇がある中庭でまだ何かを言い争っているようだった。

 校舎と校舎の間に位置する空間。人々は通路代わりにそれぞれの方向へと行きかう。

 そこにグレイスがベアトリスを連れてきたものだから、皆驚いて黙り込み、借りた猫のように大人しくなった。

「グレイスから聞いたわよ。喧嘩したんだって。詳しい事はわかんないけど、もうやめましょう。グレイスが困ってるよ」

「グレイス、あんた何を言ったのよ」

 サラが責めるとグレイスは俯いてしゅんとした。

「サラ、どうしたの。グレイスはあなた達がいがみ合ってるとしか言ってないわ。私はそれを止めに来ただけ。でも原因はなんなの?」

 三人とも口をつむぐ。

 目だけはベアトリスに向けていた。まるでその原因がベアトリスにあるような目つきだった。

「一つ聞いていいですか」

 口を出したのはケイトだった。眼鏡の奥から冷静な視線がベアトリスに向かう。

 ベアトリスが頷くと周りの三人はケイトに釘漬けになった。

 変なことを言い出さないかと不安でじりじりさせられた。

「好きな人はいますか?」

 ケイトの質問にサラが一番反応した。

「えっ、その質問と喧嘩がなんの関係があるの?」

 突拍子もないケイトの質問に驚きすぎてベアトリスは固まった。

「だから、好きな人がいるんですか?」

 もう一度ケイトが繰り返す。

「そ、それは、その」

 正直迷惑な質問だった。

 もちろんベアトリスは答えたくない。

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