ピュアダーク
 だがそれは、一瞬にして周りの大人に取り押さえられ引き戻されてしまったが、それでも諦めずに泣きじゃくりながら手をじたばたして、必死に抵抗していた。

 ベアトリスはパトリックを見つめつつ、その女性に手を握られ、強い力で引っ張られる。

 質問する暇もなくさっさと連れて行かれた。

 足がもつれ、たどたどしく歩きながらも何度か後ろを振り返る。

 自分でも何が起こってるかわからないまま、誰かに教えて欲しいと目だけは訴えていた。

 その時、パトリックが大人たちに押さえ込まれていた手を振り払い、小さな手を精一杯差し出してベアトリスに駆け寄った。

 指先に力を込め、必死にベアトリスを捉まえようとする。

 その努力も虚しく簡単に大人に羽交い絞めにされ、それ以上は身動きできなくなり、力の無さを嘆いた。

 理不尽に抱いた気持ちを吐き出すように、子供らしからぬ一人の男としてベアトリスの名前を叫ぶ。

 しかしベアトリスはすでに開いたドアの向こう側に立っていた。

「ベアトリス! 必ず見つけて君を……」

 ドアがバタンと閉まる音に最後の言葉がかき消された。

 だがベアトリスにはどうしても「助けに行く」と聞こえたように思えた。

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