ピュアダーク
「シールドが解除されたら、ベアトリスが危なくなる。だけどシールドがあればあなたはずっと近づけない。ベアトリスが真実を知らない限り、あなたには不利ね」

「真実を知らせたら、俺はもっとベアトリスに近づけなくなる。自分の正体がばれたら彼女は俺を怖がるだろう。それならば何も知らないままでシールドを解除して俺が側にいて守る方がいい」

「アメリアがそんなこと許すわけがないわ」

「そんなこと判ってるさ。一番いいのはアメリアとベアトリスを離すことができたらなんだが、そうすればあの水からベアトリスを遠ざけられる。あれを摂取する限り、彼女のシールドは破れない」

「水か…… ライトソルーション、光の溶液のことね」

「ああ、そうだ。ホワイトライト達が作るポーションのことさ。そんな名前があるとは知らなかったけど。ベアトリスの食事に混ぜたり、おそらくシャンプーなんかにも入ってるんだろう。俺はそれを燃やすことができるが、ベアトリス自身に直接の被害はないとはいえ、自分が燃やされるところをみたらショックだろう。できたら摂取させないようにしたいのさ」

「そして、いい方法が見つからず、ベアトリスに気持ちが伝わることもなく、苛ついて、自分をも傷つけ、それでも足らず、学校に八つ当たったって筋書きね」

 ヴィンセントはそこまで見破られたかと、ズタズタのシャツを鷲づかみに握り締め顔をしかめる。

 しかし本当のことなだけに、隠しようもなく、悪ぶりながら堂々と肯定することにした。

「そうさ、俺の悪い癖さ。思うようにならないと怒りが爆発する。どうせ俺はダークライトだからな」

 ヴィンセントは自分で言っておきながらあまりのかっこ悪さに情けなくなり、ふっと息を漏らして目を伏せた。

「関係ないものを巻き込むのは頂けないけど、なんかあなたに同情するわ。好きな人に気持ちが伝わらないことほど辛いものはないもの」

「ダークライトに向かって同情する奴なんて今まで居なかった。そっか、君も同じような経験をしてるってことか」

「ちっ、違うわ、私は……」

 サラが慌てて否定するが、どうでもいいことだとヴィンセントはすぐに言葉を返した。

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