ピュアダーク
「長話してしまったな。俺はこれで失礼する。気持ちを吐き出して少しはせいせいした。あっ、そうそう、あのソバカスとメガネに伝えといてくれ。許して欲しかったらもう俺の邪魔をするなって。それじゃ」

 背を向け、手をバイバイと振る仕草を見せてヴィンセントは今度こそ去っていった。

 サラは黙って動かずじっとしている。

 ヴィンセントの背中を見ていると、 哀愁を感じずにはいられない。

 心がずたずたに傷ついてるのが背中から滲みでているようだった。

 ダークライトを嫌ってるとはいえ、サラはヴィンセントには悪い印象を不思議と抱けなかった。


 サラは感慨深くヴィンセントとの会話を思い出しながら歩いていた。

 ヴィンセントの時折見せた、口元を少しあげただけの切ない微笑がやけに脳裏に残る。

 ダークライトとして生まれた自分を卑下したようにも見えた。

 サラはもし自分がダークライトだったらと仮定すると、同じように自分を呪ったかもしれないと考えていた。

 たまたまディムライトの地位を得たが、どうせなら何も知らないノンライト(=人間)が一番幸せなのかもと考えていた。

「ホワイトライト、ディムライト、ノンライトそしてダークライトか。階級付けされたら、最後のものは常に見下される運命。ノンライトだけが、力が備わってないだけに他の存在のことも全く何も知らず、のん気なもんね。だけど、ホワイトライトとダークライトの恋なんて無謀すぎる。ノンライトの世界でいうなら、天使と悪魔。でも私はなんか応援したくなってきた。ベアトリスがヴィンセントと難なくくっつけばパトリックだって……」

 サラが独り言を頭で並べ立てているとき、ベアトリスたちの姿が目に入った。

 レベッカとケイトが尻尾を振って、ベアトリスにじゃれつく子犬に見える。

 グレイスも構って欲しそうに足元に擦り寄る子猫に見える。

 三人ともベアトリスにすっかり魅了されていた。

 ホワイトライトは慈悲の愛をもたらすもの。

 光を与え心を癒し人々を救いへ導く。

 シールドがされて力を押さえ込まれていてもベアトリスのホワイトライトの能力の強さはサラには推測できた。

 この時になってふと気がつく。

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