ピュアダーク
  最後のこの一言だった。

──『お前は弱すぎる』──

 まさに父親が言った言葉通りだとヴィンセントは自分でも納得していた。

 だからこそ自己嫌悪に陥り、その感情に流されるままになっていた。

 このままではダメだと分かっていながらも──。

「くそっ、ダークライトの何が悪い。俺たち見かけは全然変わらないじゃないか。最初から決め付けられてたまるもんか」

 ヴィンセントは決め付けられた人生に嫌気がさした。心の底から怒りが噴出す。

「何もかも変えてやる。そしてベアトリスもあのしがらみから救い出してやる」

 とは言いつつ、感情が自分の理性を上回るとコントロールできないのが難癖の一つ。

 自分でもまだ理解していないダークライトの能力はヴィンセントを苦しませていた。

 感情がコントロールできない弱い奴と言われても仕方がないが、力が強すぎて少しの刺激でトリガーが引かれてしまうのも事実だった。

 ニトログリセリンが、少しの振動で爆発を起こしてしまうように、ヴィンセントもまたいつ爆発するかわからない繊細な爆弾を常に抱えている。

 落ち込み、苛つき、悲しみと複雑に絡み合ういたたまれない気持ちでジーンズのポケットに手を突っ込み、当てもなく歩いていると、ヴィンセントを呼び止めるクラクションが後ろからしつこい程鳴らされた。

 無視できず立ち止まり振り返った瞬間、目を見張ってそいつの名前が口から飛び出た。

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