ピュアダーク
「コール!」

 ぼさぼさの赤毛に、無精ひげを生やし、頬がこけてだらしないいい加減さが目立つ。

 青い瞳をもっているというのにぎょろりとして濁っている。

 見るものに近寄りがたい不気味さを与えていた。

 首には金の鎖のようなネックレスがいやらしく輝き、本物であってもこのいい加減そうな男が身につけるとちゃらちゃらと見掛け倒しのまがい物に見えていた。

 コールもまたその通りだと開き直ったふてぶてしい笑いを、ヴィンセントに向けた。

「よぉ、ヴィンセントじゃないか。お前がこんなところをうろついてるなんて不思議なこともあるもんだ。ベジタリアンのダークライトの癖に」

 ベジタリアンのダークライト──。

 馬鹿にされたも同然だった。

 しかし、忌み嫌われる他のダークライト達にとって、ヴィンセントとその父親のリチャードはノンライトのために尽くす裏切り者とみなされていた。

 だが、リチャードはダークライトの中でも専ら強い力を持ち、誰も立ち向かうことができない。

 この辺りのならず者のダークライト達は大人しくするか、他の町へ移るかしかなかった。

 刃向かうものなら、リチャードは容赦はしなかったからだった。

「お前こそ、町から追い出されたんじゃないのか。俺の親父に」

 嫌なものに出会ってしまったと、嫌悪感を露にしてヴィンセントは嫌味っぽく言った。

「ああ、あの時は、大した目的もなくフラフラと悪いことしてただけだから、俺にとっちゃ遊びだった。うるさいハエがいるところよりは他に行った方が楽しいだろうと思って自ら出かけただけさ」

 コールはふんと鼻先を膨らまして強がって笑っていた。

「だったらなんで帰ってきたんだよ」

 ヴィンセントは目障りだと、にらみを効かす。

 コールは厄介な奴だった。

 年は30前、痩せてはいるが適度の筋肉がつき強靭な体つきで機敏に動く。

 性格は鬼畜でずる賢く残忍さが他のダークライトよりも際立っていた。

 自分は直接手を加えずに悪事を働かすのが得意だった。

 そのため刑事であるヴィンセントの父親も直接の証拠がつかめず手を焼いたこともあった。

 逆らえばしつこいほどの攻撃をしかけ、命を奪うことも当たり前。

 他のごろつきのダークライトも恐れるほどの手に負えない部類。

 そいつがここに戻ってきた。

 不吉な軋み音が心に響きヴィンセントの不安をかき立てる。

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