ピュアダーク
「えっ? 私、その」

「いいのよ、ああいうハンサムは来るもの拒まずで、どんな女の子にもちょっかい出すタイプなのよ。ベアトリスはそれに早く気がついてよかったのよ」

「アメリア、わかってたの、私が彼を好きだって。私、馬鹿だったの。ヴィンセントにちょっと優しくされてうぬぼれてしまった。そうよね、こんなダサイ私のことなんか本気にするわけないもんね」

 声が震え、泣き出しそうなのをベアトリスは必死で堪えている。

 また辛いシーンだと、アメリアの胸がずきずきと痛んでいた。

 両手を差し出し、側に来いと示唆すれば、ベアトリスは待ってましたといわんばかりにアメリアに抱きついた。

 横隔膜に入り込んでしゃっくりが出るほどに激しく泣いた。

 アメリアは内心なんとかしてやりたかった。

 本当は両思いなのに、引き離さないといけない。

 ヴィンセントがダークライトという理由だけで──。

 ヴィンセントがベアトリスを好きだというのはずっと前から判っていたことだった。

 それでも彼の近くに住んだ理由として、ヴィンセントの父、リチャードの影響が大きいからだった。

 ダークライトの刑事がいる土地はベアトリスが暮らすには安全が保障されていた。

 リチャードが居れば、他の邪悪なダークライトは滅多に寄りつかない。

 アメリアも計算してのことだった。

 だがやはり二人は引き寄せられてしまった。

 アメリアは安全を重視するが故に、ベアトリスを悲しませる結果になってしまったことが申し訳ない。

 何もかも自分のせいだとばかりに、どんどん苦しくなるばかりだった。

 ベアトリスの頭を優しく撫ぜながらアメリアは考えていた。

 ぱっと心に浮かんだことを、自分でもいいアイデアだとばかり嬉しそうに叫ぶ。

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