ピュアダーク
「ねぇ、ベアトリス、今から買い物に行って、そして夜は美味しいものでも食べに行こうか。さあ行きましょう」

「えっ?」

 アメリアは善は急げと、ベアトリスを引っ張って外に飛び出し、無理やり車に押し込んだ。

 目は真っ赤に泣き腫らし、ベアトリスは有無をいわされないままショッピングセンターに連れて行かれた。

 いつもらしくないアメリアの行動に面食らっていた。

 慎重なアメリアが、思いつきだけで行動するなんて珍しいことだった。


 ショッピングセンターに着くと、アメリアはまた車から無理やり引き摺り下ろし、ベアトリスを引っ張りまわす。

 楽しまなければ怒るわよとベアトリスを脅していた。

「アメリア、ちょっとはしゃぎすぎじゃ…… 」

 広大な土地に、幾つも小売店が入る巨大なモール。

 二階建てだが、端から端まで全てが吹き抜けになっている。

 メインエリアは大きな飾りがある噴水がおかれ、それを取り囲んで上と下の階を繋げるエスカレーターが設置されていた。

 中は明るく眩しいくらいだった。そこをこれもかわいい、あれもかわいいと走り回り、手当たり次第にアメリアはベアトリスに薦める。

「これはちょっと小さいし、これは色が派手」

 困るとばかりに、ベアトリスは何かにつけて拒否をした。

「もう、つまんないじゃない。買うっていうんだから、素直に欲しいもの言いなさい」

 逆切れされた。

「アメリア、私のために気を遣ってくれてありがとう。でも私もう大丈夫だから」

 ベアトリスは出来る限りのスマイルを見せた。

「あら、無理しちゃって。ほうら、あっちのお店に入ってみよう」

 強引に手を引っ張られてベアトリスはつんのめりそうになっていた。

「これなんかかわいい。ねぇ、これを色違いで買って、私と一緒に着るってどうかしら」

 アメリアはお揃いのTシャツを並べてベアトリスに見せる。自分ははブルーでベアトリスはピンクだと知らせている。

 それならばとベアトリスも大きく頷いた。

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