タイムマシーンにのりたい
そのさん
「まるで、ドラマみたいね」と、ママは言った。
あの時にはママの言葉の意味は、よく分からなかったけれど、あの時のことを思いだすだけで、ドキドキする。
今では、それが「ドラマみたい」ってことなのかなと思う。
しのちゃんはママの妹で、私の「おばさん」らしいけど、私はずっと「しのちゃん」と呼んでいる。
ママに似ていて、優しくて、おもしろいけど、怒るとちょっぴり怖い。
でも、ママみたいに私を子ども扱いしないから大好きだ。
そんなしのちゃんは、3年前に結婚した。
しのちゃんの結婚相手は私とママとしのちゃんの3人で道を歩いている時に初めて会った、背の高い男の人だ。
男の人の顔を見て、しのちゃんはとても驚いた顔をして、男の人が近づいてきて、しのちゃんに何か言ったら、今度はしのちゃんが突然泣きだしたから、私はとても驚いた。
あとからママが「あれはしのちゃんに結婚を申し込んだのよ」って教えてくれたけど、ちんぷんかんぷんだった。
だって、それが本当なら、きっとうれしいはずだから、泣いたりなんてしない。
絵本のなかのお姫さまみたいに、にっこり笑ってうなずけばいいんだもの。
ママがまた「うれしくても涙が出るのよ」って教えてくれたけど、それでも私は納得がいかなかった。
だって、出会ってすぐに結婚するなんて変だ。しのちゃんも私に「知らない人について行っちゃダメよ」って、よく言うもの。
なのに、しのちゃんは、涙をぬぐった後に、うんうんうなずいて、知らない男の人にぎゅっと抱きついたんだ。
私はびっくりしすぎて、胸が飛び出すくらい、どきどきした。思わず、ママのてをぎゅっとにぎったら、ママはすぐに抱っこしてくれた。ママの肩にあごをのせたら、しのちゃんのことは見えなくなって。
しばらくすると、しのちゃんがママのところに来て、何かを早口でしゃべって、どこかへ行ってしまった。
私は、ママに抱っこされたまま、家に帰った。
帰り道にママは「あの人は、はじめて会った人じゃないみたいよ」と教えてくれた。それでも、おかしなことがたくさんあると思ってママにいろいろ聞いてみたけど、途中から眠くなって、ほとんど覚えていない。
そういえば、しのちゃんとハンバーガーを食べるはずだったのに。
家について、起きてからやっと思い出した。