俺は彼女に溺愛中 。
私がバッと顔を上げると、
「おっ…と……ゆずちゃん積極的?」
「……っ!」
下を向いていた瑞希くんの
顔がさっきよりも近くなる。
「見えちゃうからもっと寄って」
電信柱に隠れていた私達は
2人で向かい合い、
向こうにバレないようにする。
「……っご……めん」
私は瑞希くんに言われるように
前に近寄って、
瑞希の背中に手を回す。
きっと周りから見たら
普通のカップルが
抱きついているだけにしか
見えないんだろうけど……
そこにハルがいるという、
少しの罪悪感と、瑞希くんとの距離で
心臓の音は大きくなるばかりだ。
あれ……でもハル誰と話してーー
「ううん、大丈夫。
また話聞かせてね」
ハルの声が聞こえた方から聞こえる声。
嫌な予感で頭が
真っ白になる 。
「……おう、また明日な
気をつけて帰れよ」
「ありがとうまた明日」
ーーーーー彼女を
美麗ちゃんを
バス停まで送って行ったハルは、
こっちに向かって歩いて来て
家に入る。
「……い、今の見間違えだよね?」
私はハルが家に入ると同時に
瑞希くんにそう聞く。
「……美麗ちゃんで間違いないかな」
「……だ…よね〜……」
分かっていた事実も認めたくない。
「それにしても、転校生ちゃんも
やり手だね〜……」
瑞希くんはそう呟く。
「どうして……」
「ま、とりあえず帰ろっか!」
瑞希くんは優しく微笑んでは、
私を家の門まで送ってくれた。
「今日は、ありがとうっ」
「いーえ、こちらこそ!
また明日!バイバイゆずちゃん!」
「うん!気をつけて!」
私は瑞希くんに手を振ったあと、
家に帰って、そのまま
床に倒れ込んだように寝てしまっていた。