僕等の、赤。
 マルオが、そんな拓海の袖を掴んで、フルフルと顔を左右に振った。

 きっと、蒼ちゃんを失ったあの日を思い出したのだろう。

「大丈夫。俺は必ず戻る。次のお祝いは俺が買い出し担当って約束だっただろ? 正しくは【がっくんと俺】だけど、大量に買い込まないから俺1人で大丈夫。蒼ちゃんだって絶対に4人で飲みたいと思ってるに決まってる。4人で、岳海蒼丸で祝おうよ」

 拓海がそっとマルオの手を下ろした。

 蒼ちゃんとマルオが買い出しに行ったあの日、『蒼ちゃんの卒業祝いは拓海とがっくんが買い物に行ってね』とマルオに言われたことを、拓海はしっかり覚えていた。

 蒼ちゃんの卒業祝いではなくなってしまったけれど、今日は4人にとってめでたい日に違いない。

「くれぐれも気を付けね」

 マルオは拓海に頷くと、静かに蒼ちゃんのお墓に手を合わせた。

 蒼ちゃんに拓海を守ってくれるようにお願いしたのだろう。

「死なないっつーの!!」

 マルオに元気よく笑って見せた拓海は、「5分で戻る」という無理でしかない謎の約束をして、コンビニへと走って行った。
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