僕等の、赤。
「お母さーん。ジュース」
土曜日の昼下がり、リビングで洗濯物を畳んでいると、傍でお絵かきをしていた息子が喉の渇きを訴え愚図りかけた。
「待ってね。今持ってくるね」
蒼ちゃんが私の前に現れなくなってすぐ、妊娠が発覚し、唐沢と結婚した。
私は仕事を辞めて東京へ引っ越し、育児をしながら小説を書いている。
息子は、絵本や赤いクレヨンが好きで、蒼ちゃん要素があることはある。でも、息子が蒼ちゃんの生まれ変わりでも、そうでなくても、どちらでも構わない。可愛い我が子に違いないのだから。
「リンゴジュース……」
畳み掛けのタオルを手放しキッチンへ行くと、冷蔵庫の中にある買い置きのリンゴジュースに手を伸ばす。