僕等の、赤。
「わぁ……‼」

 中から出てきたのは、岳海蒼丸の舞台告知のリーフレットだった。

 リーフレットには【是非お越しください】という手書きのメッセージが書いてあり、チケットが3枚添えられていた。

 私の連絡先を知らない岳海蒼丸のメンバーが、出版社経由で送ってくれたのだろう。

 リーフレットには、【脚本:蒼汰】としっかり印字されている。

 これは間違いなく、蒼ちゃんと2人で書き上げた作品だ。

 脚本を岳海蒼丸に送ってから何の音沙汰もなかった為、蒼ちゃんが書いたものではないと判断されてしまったのだと思い込んでいた。

 嬉しいな。やっと形になるんだな。とリーフレットを眺めていると、

「お、遂に岳海蒼丸再始動するんだ。つかチケット、家族分あるじゃん。でもこれ、子ども向けじゃないだろ。俺らは留守番してるから、ひとりで行っておいで」

 息子を抱っこした唐沢が寄ってきて、リーフレットを覗き込んだ。

 息子が蒼ちゃんの生まれ変わりだったとしたら、岳海蒼丸のみんなに会わせてあげたい。でも唐沢の言う通り、着ぐるみのキャラクターが出てくるわけではないから、子どもが見て楽しいかどうかは疑問。ひとりで行くか……。と、眉を顰めた時、

「僕も行くー。赤ーい」

 息子が、蒼ちゃんをイメージしたかのような赤いリーフレットを指差した。

「赤いねー。綺麗だねー。やっぱり、3人で行こうよ」

 息子の髪を撫でながら唐沢を見上げると、唐沢が笑いながら頷いた。




 綺麗な赤を見ると、思い出す。


 僕等の赤は今も きみのため だけの色。




 僕等の、赤。


 おしまい。

 
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