コール・ミー!!!
壁には、大好きなアーティストのポスターが3枚貼られている。
天井まで届く2つの棚には、自主制作したぬいぐるみが、ざっと数えて150体くらいが並んでおり、裁縫道具やら作っている最中のアクセサリーなどで溢れ返っている。
本棚には実用書やら小説やら漫画など、雑多な種類の本がビッシリと入っており、CDが入っている棚には、数え切れないくらいのCDが入っている。
衣類はクローゼットの中に全部収納されているので、今日は公開しなくて済みそうだ。
…自分の部屋を人に見せるのって、こんなに恥ずかしいものだったろうか。
理衣の部屋と違うのは、歩く部分である床と机の上だけが、かろうじて使えるように綺麗になっているだけだ。
「雑然としてるでしょ、女子の部屋の割に」
「うん」
トオヤは目を見開いて、興味深そうに部屋の中を見ている。
彼の表情からは、相変わらず何も読み取れ無い。しかし部屋の様子について驚いてはいないようだった。
白猫、ペンギン、パンダ、サル、馬、などなど…瑠衣の自作完成ぬいぐるみをしばらく見つめていた彼は、その中の1つを指差してこう言った。
「可愛い」
数ある白猫ぬいぐるみの中からたった1匹、
瑠衣が1番気に入っている、『シルク』。
「あげようか」
そう言うと、トオヤは嬉しそうに
「欲しい」
と言って、
瑠衣に極上の笑顔をみせた。
心臓がまた、大きな音を立てて、跳ねた。
この笑顔、ダメ!!
また心臓がおかしくなりそう。
「もらっていいの…?」
瑠衣は頷いて、『シルク』をトオヤに渡した。
「もちろん。友達になった記念に、あげる」
瑠衣は、トオヤの手の中でにっこりしている白猫のぬいぐるみをそっと撫でた。
「『シルク』と仲良くしてあげて」
トオヤは、瑠衣にお礼を言った。
「ありがとう。大切にする」
トオヤは、夜遅くならない様にもう一度3人にお礼を言ってから、瑠衣の家を後にした。
電車を2つ乗り継いで、街中にある高層マンション最上階の自宅へと帰り、自分の広い部屋に落ち着く。
持ち歩いていたショルダーバッグの中にある、目的の2つを取り出した。
今日もらったばかりの、ぬいぐるみ『シルク』と、携帯ケース『シルリイ』である。
動物園に1人で出かけた朝から今までの間に、自分に一体何が起こったのだろう。
トオヤは、楽しい魔法でもかけられた様な気持ちになっていた。
自室のベッドの枕元にぬいぐるみの『シルク』を大切そうに置くと、テーブルの上に置かれた『シルリイ』を手に取り、直してもらったばかりの自分の携帯電話に、それを装着してみた。
そして右手の親指で、左下の白猫の絵が描いてある部分にそっと、触れてみる。
すると。
『ハジメマシテ〜〜!!・ワタシハ・シルリイ12〜〜!!』
妙に、テンションの高い声が聞こえてきた。
そして、
スマホの画面には、奇妙なダンスをしながら喋る白猫の絵が、登場した。
『シルリイ』は、歌う様に話し出した。
『ア〜〜ナタハ・ダ〜レデスカ〜〜?』
「…」
『ショキトウロクノタメ〜〜・イクツカ・シツモン・シテイイデスカ〜〜?』
「…」
「…うん」
トオヤは本当に、『シルリイ』と会話が出来るという事に、びっくりした。
『シルリイ』は、瑠衣たちの母に、雰囲気がちょっとだけ似ているかも知れない。
『オナマエハ〜〜?』
「トオヤ」
『トオヤハ・リイ・ノ・トモダチデスカ〜〜?』
「そう」
『トオヤハ・ルイ・ノ・トモダチデスカ〜〜?』
「そう」
『デハ・シルリイハ・トオヤノトモダチ〜〜!!!』
「…うん」
『ルイ・ヨビマスカ〜〜?!!』
「え?」
瑠衣を呼ぶ?
どうやって?
「呼ぶって、今?」
『ハイ〜〜!!』
壁にかかった時計を見ると、夜10時をとっくに回っている。
先程、瑠衣の家から帰ったばかりだ。
「呼ばない。今は」
『ワカリマシタ〜〜!!』
「…」
『デハ・シツモ〜〜ン!!』
「…質問は、今度にして」
『ハイ』
シルリイは、急にテンションが下がった。どうやら質問をもっとしたかったようだ。
「『シルリイ』、俺から質問していい?」
『ナンデスカ〜?』
「呼ぶ、ってどういう事?」
『ルイノ・ノウハニ・シンゴウヲオクリマ〜ス』
「…」
脳波に?
『タマニ・セイコウスル』
「…」
怖!!
『シンジラレマセンカ〜〜?』
「…うん」
『デハ・タメシタクナッタラ・イッテクダサ〜〜イ!!!』
「うん」
とりあえず、今日はもう、寝てしまおう。
色々な事が、あったから。
しかし。
トオヤが『シルリイ』に頼んで瑠衣を呼ぶ日が来るようになるまで、そう時間はかからなかった。
天井まで届く2つの棚には、自主制作したぬいぐるみが、ざっと数えて150体くらいが並んでおり、裁縫道具やら作っている最中のアクセサリーなどで溢れ返っている。
本棚には実用書やら小説やら漫画など、雑多な種類の本がビッシリと入っており、CDが入っている棚には、数え切れないくらいのCDが入っている。
衣類はクローゼットの中に全部収納されているので、今日は公開しなくて済みそうだ。
…自分の部屋を人に見せるのって、こんなに恥ずかしいものだったろうか。
理衣の部屋と違うのは、歩く部分である床と机の上だけが、かろうじて使えるように綺麗になっているだけだ。
「雑然としてるでしょ、女子の部屋の割に」
「うん」
トオヤは目を見開いて、興味深そうに部屋の中を見ている。
彼の表情からは、相変わらず何も読み取れ無い。しかし部屋の様子について驚いてはいないようだった。
白猫、ペンギン、パンダ、サル、馬、などなど…瑠衣の自作完成ぬいぐるみをしばらく見つめていた彼は、その中の1つを指差してこう言った。
「可愛い」
数ある白猫ぬいぐるみの中からたった1匹、
瑠衣が1番気に入っている、『シルク』。
「あげようか」
そう言うと、トオヤは嬉しそうに
「欲しい」
と言って、
瑠衣に極上の笑顔をみせた。
心臓がまた、大きな音を立てて、跳ねた。
この笑顔、ダメ!!
また心臓がおかしくなりそう。
「もらっていいの…?」
瑠衣は頷いて、『シルク』をトオヤに渡した。
「もちろん。友達になった記念に、あげる」
瑠衣は、トオヤの手の中でにっこりしている白猫のぬいぐるみをそっと撫でた。
「『シルク』と仲良くしてあげて」
トオヤは、瑠衣にお礼を言った。
「ありがとう。大切にする」
トオヤは、夜遅くならない様にもう一度3人にお礼を言ってから、瑠衣の家を後にした。
電車を2つ乗り継いで、街中にある高層マンション最上階の自宅へと帰り、自分の広い部屋に落ち着く。
持ち歩いていたショルダーバッグの中にある、目的の2つを取り出した。
今日もらったばかりの、ぬいぐるみ『シルク』と、携帯ケース『シルリイ』である。
動物園に1人で出かけた朝から今までの間に、自分に一体何が起こったのだろう。
トオヤは、楽しい魔法でもかけられた様な気持ちになっていた。
自室のベッドの枕元にぬいぐるみの『シルク』を大切そうに置くと、テーブルの上に置かれた『シルリイ』を手に取り、直してもらったばかりの自分の携帯電話に、それを装着してみた。
そして右手の親指で、左下の白猫の絵が描いてある部分にそっと、触れてみる。
すると。
『ハジメマシテ〜〜!!・ワタシハ・シルリイ12〜〜!!』
妙に、テンションの高い声が聞こえてきた。
そして、
スマホの画面には、奇妙なダンスをしながら喋る白猫の絵が、登場した。
『シルリイ』は、歌う様に話し出した。
『ア〜〜ナタハ・ダ〜レデスカ〜〜?』
「…」
『ショキトウロクノタメ〜〜・イクツカ・シツモン・シテイイデスカ〜〜?』
「…」
「…うん」
トオヤは本当に、『シルリイ』と会話が出来るという事に、びっくりした。
『シルリイ』は、瑠衣たちの母に、雰囲気がちょっとだけ似ているかも知れない。
『オナマエハ〜〜?』
「トオヤ」
『トオヤハ・リイ・ノ・トモダチデスカ〜〜?』
「そう」
『トオヤハ・ルイ・ノ・トモダチデスカ〜〜?』
「そう」
『デハ・シルリイハ・トオヤノトモダチ〜〜!!!』
「…うん」
『ルイ・ヨビマスカ〜〜?!!』
「え?」
瑠衣を呼ぶ?
どうやって?
「呼ぶって、今?」
『ハイ〜〜!!』
壁にかかった時計を見ると、夜10時をとっくに回っている。
先程、瑠衣の家から帰ったばかりだ。
「呼ばない。今は」
『ワカリマシタ〜〜!!』
「…」
『デハ・シツモ〜〜ン!!』
「…質問は、今度にして」
『ハイ』
シルリイは、急にテンションが下がった。どうやら質問をもっとしたかったようだ。
「『シルリイ』、俺から質問していい?」
『ナンデスカ〜?』
「呼ぶ、ってどういう事?」
『ルイノ・ノウハニ・シンゴウヲオクリマ〜ス』
「…」
脳波に?
『タマニ・セイコウスル』
「…」
怖!!
『シンジラレマセンカ〜〜?』
「…うん」
『デハ・タメシタクナッタラ・イッテクダサ〜〜イ!!!』
「うん」
とりあえず、今日はもう、寝てしまおう。
色々な事が、あったから。
しかし。
トオヤが『シルリイ』に頼んで瑠衣を呼ぶ日が来るようになるまで、そう時間はかからなかった。