コール・ミー!!!
「オマエさ、俺の女になれば?」
「…」
何も言い返す言葉が、見つからない。
「従順にしてれば、大事にしてやるよ。たまにこのテープ外してやってもいいし」
「…」
触れられた頬を、早く洗い流したい。
「また、あの兄たちを呼ぶの?」
「いや、今やつら刑務所にいるから。あと3年は戻らない」
別にそれについてこれ以上説明をする気は無い様子で、
「そういえば俺、誰かを拉致するのとか、久しぶりかも」
と拓也は締めくくった。
「そう」
「お前、男いんの?」
「男?」
「彼氏とか、セフレとか」
拓也は急に思い出した。
「そういえばホームでさ、お前の事守ってた男いたじゃん。アレか」
「…あの人は友達。彼氏はいない」
トオヤ。
会ったばかりなのに、友達になってもらって、
いきなり、こんなことに巻き込んでしまって、ゴメン。
心配かけて、ゴメン。
「てっきり、アレ彼氏かと思った。じゃあ、いいよね」
「…何が?」
拓也は立ち上がり、テーブルの上から大きいハサミを取った。
「息苦しいだろうから、まずは服を脱がせてやるよ」
拓也は、瑠衣の服を胸元からいきなりハサミで切り出した。
「…何するのよ」
瑠衣は、少し動揺した。
「ガムテープ、邪魔だな…」
拓也は、瑠衣の言葉には答えず、
胸元のガムテープも一緒にハサミで切り出した。
少し、呼吸が楽になったが、服がボロボロになってしまっている。
これ以上の屈辱を受けるのは、嫌だ。
「拓也」
「あ?」
「人の恐怖で引きつった表情や、心が壊れる姿を観察するのは、そんなに楽しい…?」
「…なんだ急に」
「テレビドラマや映画で活躍する拓也を、私は欠かさず観てきたけど」
「恐怖で歪んだ、得意分野の表情や演技は完璧のくせに」
「日常のほっとする出来事とか、優しさとか、相手を思い遣る演技に関しては、いつも完全にサル芝居だった」
「…何だと」
拓也がハサミを使う手が止まる。
「喜びや楽しさや、優しさや思い遣りの感情をもっと研究しようとは、思わない?アレで良く、アクデミー賞獲れたわね。…笑えるんだけど」
拓也の顔が、殺意に歪んだ。
瑠衣はなおも続けた。
「教えてあげようか。いくら研究しても、あなたの演技がいつまでもサル芝居なわけ」
拓也は、ハサミの鋭利な先端を、瑠衣に向けた。
「あなたは最初から、その感情を持っていないからよ。だから演じたくても演じる事が出来ないの。優しさという感情を想像する事が出来ないからよ」
「黙れ」
拓也は反対の手で瑠衣の髪の毛を掴み、思いっきり引っ張った。
「オマエだって、俺と同じじゃねえか。人の事見てばかりいて」
引きちぎられた髪の毛が、何本か抜けた。
「そうよ。ある意味、私とあなたは同じ」
だから、戦う。
「だから私は、あなたと同じ事はしない。そういう自分を、私は決して許さない」
拓也が、瑠衣にハサミを振りかざした。
「悪魔みたいな自分に、私は支配されたりしない」
その時。
ガシャン!!!!!
という音が鳴り響き、誰かが家の中に入ってきた。
「…!誰か来やがった」
拓也はハサミを取り落とし、
あっという間に瑠衣から手を放した。
そして逃げようとして、窓の方へ駆け寄った。
すると、
部屋のドアが、いきなり乱暴に開いた。
「瑠衣!!!!」
トオヤが入ってきた。
マスクをしている。
トオヤは、こちらに駆け寄ってくる。
後ろから、あと3人入ってきた。
消火器を手に持った滝君と、戌井君、最後に理衣だ。
全員、白いマスクを着用している。
「佐伯、目を瞑れ!!」
マスク姿の滝君が叫ぶ。
トオヤが瑠衣に駆け寄り、体に巻き付いていたガムテープを、落ちていたハサミで素早く全部、ほどいてくれた。
一緒に駆け寄った理衣は、瑠衣の口にマスクをつけてくれている。
「大丈夫?お姉」
「うん、平気。…ありがとう」
理衣は、自分が着ていたジャケットを瑠衣に羽織らせ、手早くボタンを留めた。
滝君と戌井君は消火器の薬剤を、窓から逃げようとした拓也に向かって一斉に放射した。
拓也はまともに薬剤を吸い込んだようで、窓から逃げることは叶わず、その場でうずくまり、身動きが出来なくなった。
滝君は拓也に駆け寄り、全力で1回殴った。
拓也はその瞬間、意識を失った。
その後、戌井君と滝君の二人で拓也の体をガムテープで、ベッドのパイプ部分に固定した。
拓也は先ほど瑠衣がされていたのと、同じ状態になったのである。
トオヤは瑠衣に、こう言った。
「心配いらない。警察ももうすぐ来る」
瑠衣は、急に安心して気が緩んだ。
「良かった。…ありがとう、助けに来てくれて」
トオヤは微笑んだ。
「うん」
瑠衣は、そんな彼の笑顔を見ると、安心して意識がふっと遠のいた。
再び瑠衣は、気を失ってしまったのだ。
「…」
何も言い返す言葉が、見つからない。
「従順にしてれば、大事にしてやるよ。たまにこのテープ外してやってもいいし」
「…」
触れられた頬を、早く洗い流したい。
「また、あの兄たちを呼ぶの?」
「いや、今やつら刑務所にいるから。あと3年は戻らない」
別にそれについてこれ以上説明をする気は無い様子で、
「そういえば俺、誰かを拉致するのとか、久しぶりかも」
と拓也は締めくくった。
「そう」
「お前、男いんの?」
「男?」
「彼氏とか、セフレとか」
拓也は急に思い出した。
「そういえばホームでさ、お前の事守ってた男いたじゃん。アレか」
「…あの人は友達。彼氏はいない」
トオヤ。
会ったばかりなのに、友達になってもらって、
いきなり、こんなことに巻き込んでしまって、ゴメン。
心配かけて、ゴメン。
「てっきり、アレ彼氏かと思った。じゃあ、いいよね」
「…何が?」
拓也は立ち上がり、テーブルの上から大きいハサミを取った。
「息苦しいだろうから、まずは服を脱がせてやるよ」
拓也は、瑠衣の服を胸元からいきなりハサミで切り出した。
「…何するのよ」
瑠衣は、少し動揺した。
「ガムテープ、邪魔だな…」
拓也は、瑠衣の言葉には答えず、
胸元のガムテープも一緒にハサミで切り出した。
少し、呼吸が楽になったが、服がボロボロになってしまっている。
これ以上の屈辱を受けるのは、嫌だ。
「拓也」
「あ?」
「人の恐怖で引きつった表情や、心が壊れる姿を観察するのは、そんなに楽しい…?」
「…なんだ急に」
「テレビドラマや映画で活躍する拓也を、私は欠かさず観てきたけど」
「恐怖で歪んだ、得意分野の表情や演技は完璧のくせに」
「日常のほっとする出来事とか、優しさとか、相手を思い遣る演技に関しては、いつも完全にサル芝居だった」
「…何だと」
拓也がハサミを使う手が止まる。
「喜びや楽しさや、優しさや思い遣りの感情をもっと研究しようとは、思わない?アレで良く、アクデミー賞獲れたわね。…笑えるんだけど」
拓也の顔が、殺意に歪んだ。
瑠衣はなおも続けた。
「教えてあげようか。いくら研究しても、あなたの演技がいつまでもサル芝居なわけ」
拓也は、ハサミの鋭利な先端を、瑠衣に向けた。
「あなたは最初から、その感情を持っていないからよ。だから演じたくても演じる事が出来ないの。優しさという感情を想像する事が出来ないからよ」
「黙れ」
拓也は反対の手で瑠衣の髪の毛を掴み、思いっきり引っ張った。
「オマエだって、俺と同じじゃねえか。人の事見てばかりいて」
引きちぎられた髪の毛が、何本か抜けた。
「そうよ。ある意味、私とあなたは同じ」
だから、戦う。
「だから私は、あなたと同じ事はしない。そういう自分を、私は決して許さない」
拓也が、瑠衣にハサミを振りかざした。
「悪魔みたいな自分に、私は支配されたりしない」
その時。
ガシャン!!!!!
という音が鳴り響き、誰かが家の中に入ってきた。
「…!誰か来やがった」
拓也はハサミを取り落とし、
あっという間に瑠衣から手を放した。
そして逃げようとして、窓の方へ駆け寄った。
すると、
部屋のドアが、いきなり乱暴に開いた。
「瑠衣!!!!」
トオヤが入ってきた。
マスクをしている。
トオヤは、こちらに駆け寄ってくる。
後ろから、あと3人入ってきた。
消火器を手に持った滝君と、戌井君、最後に理衣だ。
全員、白いマスクを着用している。
「佐伯、目を瞑れ!!」
マスク姿の滝君が叫ぶ。
トオヤが瑠衣に駆け寄り、体に巻き付いていたガムテープを、落ちていたハサミで素早く全部、ほどいてくれた。
一緒に駆け寄った理衣は、瑠衣の口にマスクをつけてくれている。
「大丈夫?お姉」
「うん、平気。…ありがとう」
理衣は、自分が着ていたジャケットを瑠衣に羽織らせ、手早くボタンを留めた。
滝君と戌井君は消火器の薬剤を、窓から逃げようとした拓也に向かって一斉に放射した。
拓也はまともに薬剤を吸い込んだようで、窓から逃げることは叶わず、その場でうずくまり、身動きが出来なくなった。
滝君は拓也に駆け寄り、全力で1回殴った。
拓也はその瞬間、意識を失った。
その後、戌井君と滝君の二人で拓也の体をガムテープで、ベッドのパイプ部分に固定した。
拓也は先ほど瑠衣がされていたのと、同じ状態になったのである。
トオヤは瑠衣に、こう言った。
「心配いらない。警察ももうすぐ来る」
瑠衣は、急に安心して気が緩んだ。
「良かった。…ありがとう、助けに来てくれて」
トオヤは微笑んだ。
「うん」
瑠衣は、そんな彼の笑顔を見ると、安心して意識がふっと遠のいた。
再び瑠衣は、気を失ってしまったのだ。