コール・ミー!!!
土曜日。




足元が、ふらふらする。





少し、意識が朦朧としている。







だけど、行かなくちゃ。












トオヤからもらったベージュのドレスを綺麗にたたんで袋に入れ、














白猫のシュークリップと、
















白猫のイヤリングと、



















白猫のネックレスを、忘れずにバッグに入れて。











電車とバスを乗り継いで、指定の場所へと向かう。













頭が痛くなってきた。


















悪寒がしていて、体が震える。




































指定された場所は、都内だというのに森林に覆われていた。



















隠れ家風の白い洋風1軒家のその場所には、
トオヤの会社で以前に案内をしてくれた、倉田さんが待っていてくれた。









「佐伯さん、お久しぶりです。…どうぞ、こちらへ」








倉田さんは、瑠衣を広い控室に案内してくれた。




「こちらで着替えて、開場時間までお待ち下さい。必要なものがあったらお持ちしますね」



倉田さんが部屋から出て行こうとしたので、瑠衣は思わず呼び止めてしまった。



「あの、倉田さん。私、ここに来ても良かったんでしょうか…何だかとても場違いな気がして…」





倉田さんは首を横に振って笑った。




「透矢さんの強い希望で、瑠衣さんに来ていただいたんですよ。今日は、彼のお披露目なんです」





















ドレスに着替えて、アクセサリーを完璧に身に着ける。

カードを提示し、受付を終えて中に入る。

吹き抜けになっている広々としたフロアには、たくさんの料理と飲み物が並んでいた。


会場には、美しい色とりどりの『アフローミア』のドレスを身に着けた女性達や、世界各国から集まったと思われる、洗練された服装の大人たちで溢れ返っていた。



こちらを見て、感嘆の声が上がる。




誰もが、瑠衣のドレス姿に注目しているような気がする。









瑠衣は頭の中が急激に、ふらふらしてくるのを感じた。




そのおかげか、場違いで居心地が悪くなりそうな気持ちにさえ、集中できなくなっていた。










13時。







会場の中より少しだけ高い位置にあるステージの上に、ある男性が姿を現した。



よく見ると、その男性は少年の様である。



さらさらした栗色の少しだけ長い髪と、滑らかな透き通るような肌。
少し薄茶色がかった美しい瞳を持つ、現実離れした、超絶美形。




彼は軽くマイクの前で会釈をし、話し出した。





「小さな頃から、何かを作ることが好きでした」






彼は、会場全体を見回し、すぐに瑠衣を見つけ出した。






「作りたいものは、いつも変わらなかった」







彼は、瑠衣だけに優しく微笑みかけた。







「だけどある人に出会って、もっと新しい何かをたくさん、作りたくなりました」











彼しか持たない、射る様な瞳。












「その人は、俺にたくさんの出会いをくれて」













彼は、ステージを降りて、













「色々な気持ちを、教えてくれました」











心配そうに、足早にこちらへと近づいてくる。












「その人に身に着けてもらいたくて作った新作が『RUI』」



















瑠衣の意識が、ふと、消えた。


















その瞬間



















誰かが、体ごと抱き留めてくれた気がした。


































目を開ける。


















こちらを見つめる、優しい瞳。




瑠衣が良く知る、たった一人。


















トオヤが、瑠衣をじっと、心配そうに見つめている。












瑠衣が眠るベッドの横に、座りながら。











「私、どうしたの…?」









瑠衣が聞くと、トオヤが静かな声で答えた。



「熱を出して、倒れたんだ」













トオヤは、瑠衣のおでこにそっと手を当てた。














「まだ少し、熱がある。瑠衣、気分は?」




















「平気。…ごめんね、トオヤ。せっかくのパーティーだったのに…」














瑠衣が申し訳無さそうに言うと、


トオヤは首を横に振って、微笑んだ。















「挨拶は終わったから、もう大丈夫」











彼は瑠衣の頬に、右手で触れた。


「体調が悪かったのに、来てくれたの?…無理させて、ごめん」




















「ううん」

瑠衣は、情けなさそうに笑った。



「トオヤに会いたかったから、早く」
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