甘くてやさしくて泣きたくなる~ちゃんと恋したい
「あの芳江ちゃんの相手ってどんな人なのかな」

あまり根ほり葉ほり聞くと母に嫌がられそうな気がして、つぶやくように言った。

『アメリカ人だって』

今回は母も言いたくてうずうずしていたのか語調強めに答える。

芳江ちゃんのお相手は昨年アメリカ旅行に行った時にバーで出会ったアメリカ人らしい。

そんな相手を選ぶのも芳江ちゃんらしくて思わず笑ってしまう。

その時はわからなかったけれど、彼はアメリカでもトップを争う一流の商社マンだったらしく、結果的には申し分なかったんだとか。

『でもアメリカに居住するみたいで妹も嘆いていたわ。芳江ちゃんには日本で普通の結婚をしてもらいたかったみたいで』

「そう」

好きな人と、好きな人の国で暮らす。

今までの私だったらそんな冒険できっこなかっただろうけど、本当に好きな人とだったらどこへでも行けるのかもしれない。

間宮さんとだったら……。

日本じゃなくても海外でも宇宙にだって一緒に行ける。

それくらいどうってことない気がした。

『年下の芳江ちゃんに先越されたけど、凛もそろそろいい相手探さないとね』

年下とか、そんなこと関係ないし。

『お見合い話が何件が来てるんだけど、今度会ってみなさい』

会ってみなさい?

そのあまりに強引な持っていき方にムッとする。

「勝手に決めないで!」

口答えもせず、母の機嫌を伺いながら生きてきた私が母に強い口調で言い返した。

『あら、凛、そんな怒ってどうしたの?まさか変な虫がついてるなんてことないわよね』

「変な虫って何?」

『変な男ってことよ。くだらない男にひっかかったら品位を下げるもんだわ』

こんなにも冷ややかに母の言葉を聞いたことがあっただろうか。



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