甘くてやさしくて泣きたくなる~ちゃんと恋したい
「お待たせ!」

開いたままぼんやりしていたら、私の背中がポンと軽く叩かれた。

振り返ると以前会った時のショートカットがさらにショートになった弥生がにっこり笑って立っていた。

「お疲れ様、弥生。元気そうね」

「まぁまぁね」

「まぁまぁには見えないくらい元気に見えるけど」

私はくすっと笑った。

弥生の髪の色が少し明るくなったような気がした。それから弥生の表情も持ってる雰囲気も。

このバーの電光のせいだろうか?

お互い好きなカクテルを頼み乾杯すると、仕事の話やら、最近起こった面白い話やらで盛り上がる。

もっぱら話しているのはおしゃべり上手な弥生だけど、弥生の話はどれも楽しくていつまで聞いてても飽きない。

笑いっぱなしの心地いい時間が過ぎていく。

丁度三杯目のカクテルを頼んだ時、ふいに「あのさ」と言って弥生が真面目な顔を私に向けた。

さっきまでふざけて笑っていた表情とあまりに一変していたので、思わずドキッとして弥生の顔を見つめる。

「どうしたの?急に真面目な顔しちゃって」

もともと、今日会いたいと言い出したのは弥生だった。

ひょっとしたら、何か話したいことがあったのかもしれない。


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