甘くてやさしくて泣きたくなる~ちゃんと恋したい
玄関に足を踏み入れた瞬間、ぷーすけが私に飛びついてきた。

「ぷーすけ!」

私はその場でしゃがみこみぷーすけを抱きしめる。

ぷーすけは何度も私の口元を舐め、全身で喜びを表していた。

「広瀬さんの顔見たら途端に元気になりやがって。僕の立場がないな」

間宮さんは苦笑しながら腰に手をやる。

ぷーすけの全身を撫でまわしながら、これくらい間宮さんも喜んでくれたらうれしいのに、なんて思っていた。

間宮さんは、リビングの奥にある洋室を私のために空けてくれていた。

10畳ほどの広い洋間にはセミダブルのベッドと小さなタンス、そしてクローゼットが置いてある。

この家具は私のために用意してくれたのかもしれない。そう思うだけで心が浮き立つ。

そして、相変わらずシンプルだけど品のいいデザインに感心する。一体どこで見つけてきたのかしら?まぁ、彼はプロだものね。

自然と選んだものがおしゃれになるのも仕方がない。

私は運んでもらった荷物をタンスやクローゼットに片付けていった。

片付けている間もずっとぷーすけは私から離れようとはせず、隙を狙ってはじゃれてくる。

リビングからこちらの様子を伺っていた間宮さんがぷーすけを呼んだ。

「こら、ぷーすけ。邪魔するなよ。こっちにこい」

ぷーすけはそんな彼に知ってか知らずか知らん顔。

そんな様子がおかしくてつい笑ってしまう。

ぷーすけのお陰で私の緊張は随分と治まっていた。

「ありがとね」

私は小さな声でささやくと、ぷーすけの頭をそっと撫でた。




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