甘くてやさしくて泣きたくなる~ちゃんと恋したい
10分ほど待ってようやく店内に案内される。

額の汗を拭きながら、直美は「暑い日に熱々のラーメンがたまんないのよね」と言って席に座った。

そんな直美はほんと忙しい人だと思いつつも、見ていて飽きない。

いつも明るくて、お話上手で、気楽に過ごせる。

こんな人がきっといい奥さんになるんだろう。

頼んだ煮卵キムチラーメンはすぐに出来上がって私の前に置かれた。

持ってきたヘアゴムで髪を後ろに束ねる。

「おいしいー!」

直美は頼んだチャーシュー煮卵ラーメンをすすり、カウンターを挟んで立っていた大将に声をかける。

「いっつもおいしそうに食べてくれて、ありがたいねぇ」

40代後半の眉の濃いかっぷくのいい大将は、直美がおいしいと言って食べるのを嬉しそうに眺めていた。

そんな大将が私にもちらっと視線を向ける。

目があって思わずうつむく。

こういう時、直美みたいにちゃんと自分の気持ちを伝えれればいいのに。

なんだか恥ずかしくなってうつむいちゃうんだよね。

「お隣のかわいこちゃんはどうだい?」

カウンター越しに大将が私にも声をかけてきた。

「大将!私にはかわいこちゃんって言ってくれないんですねぇ」

直美はラーメンを頬張りながら細い目で軽く大将をにらむ。

「かわいこちゃんってあらためて言わなくてもわかってる話だから言わなかったんだよ。おいしそうに食べるかわいこちゃん」

「あはは、大将、いつも上手なんだから!」

そう言って、直美はケタケタ笑った。

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