甘くてやさしくて泣きたくなる~ちゃんと恋したい
「そんな驚いた顔しないでよ、なんだか恥ずかしいじゃない」

「だって、最近まで恋したいって騒いでたから」

私たちは二人並んだままレジに向かう。

直美は、気さくで人見知りもしないくせに、いつも肝心な相手がいる時には前に出れない性格だった。

だから私とはタイプは違うけれど恋にはすごく奥手。

レジでカフェオレを買い、直美とコンビニの外に出る。

涼しいコンビニから一気に蒸しっと汗ばむ熱風が私たちを包んだ。

ゆっくりと歩きながら尋ねる。

「素敵な出会いが最近あったの?」

「うん、この間仕事で一緒になった相手先のイケメン」

「相手先のイケメン?」

「うちの社にも何度か打ち合わせで来てるから、凛ちゃんも顔合わせたことあるかも」

そんなイケメンいたっけ?

もし、いたとすれば、私の中には間宮さんくらいしか思い当たる人はいない。

って、ひょっとして間宮さん??!

ドクンと大きく胸が震えて、体中の熱がすーっと下がっていくような感覚になる。

「ほんと、久々に見たんだよねぇ、あんなイケメン」

「そ、そうなんだ」

急にトーンが下がった私の顔を直美は不思議そうな目で覗き込んだ。

「あれ?思い出さない?なかなかいないわよ、あんなイケメン」

「それって、誰、かな……」

私は小さい声で尋ねた。

だって、もし、直美の言ってる彼が間宮さんだったらどうしよう。

私よりも先に私に間宮さんのことが好きだって公言したってことは、私が後から「好き」だなんて決して言えなくなっちゃうんだもん。

「誰って?もちろん内緒!恋が成就したらすぐに教えるわ」

「え、そうなの?」

早く聞きたいようで聞きたくないその名前。

結局教えてもらえなくてホッとしている自分がいたことも確かだった。
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