甘くてやさしくて泣きたくなる~ちゃんと恋したい
その日は一日落ち着かなかった。

直美と視線が合うたびに、ドキドキして目を逸らす。

見た目も性格も対照的な私たち。唯一の共通点は恋に臆病ってところだけ。

もしも、直美が間宮さんに思いを打ち明けたりなんかしたら……。

一緒にいて会話が弾む直美は私よりもずっと魅力的。さっきの大将だって、ずっと直美の顔ばかりにこにこ見ていた。

間宮さんだってきっとそうにきまってる。

誰かと同じ人を好きになるってこんなにも不安になるものなんだ。

最近、楽しい毎日のお陰で随分ポジティブになっていたけれど、今は久しぶりにすごくネガティブになっている。

あぁ。

恋するってこんなにもしんどいものなの?

うきうきする気持ちだけじゃなくて、ふとしたことでずどーんと奈落の底に突き落とされる。

この落差に私は果たしてついていける?

そんな状況の中で、ずっと間宮さんのこと好きでいられるんだろうか。

長く感じた就業時間はようやく5時のチャイムとともに終了した。

直美に軽く挨拶をして事務所を出る。

電車に揺られていても、改札を抜け帰り道を歩いていても、ずっと言い知れぬ不安が私の胸を締め付けていた。

今日も間宮さんは遅いのかな。

でも、今日は間宮さんの顔を見たいと思った。

そして、いつもの優しい微笑みで「ありがとう」って直接言ってもらいたい。








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